不定期連載小説。第2弾『movie 』

『case1…死にたがる男』





一身上の都合により、最近は死ぬ事ばかり考えている。




自殺する時に一番苦しいのは焼身自殺だとよく聞く。
ガソリンを浴びて、自分で火をつける。大した勇気だ。見上げたもんだ。いくら私が死ぬ気でも、土壇場で怖じ気づいてしまいそうだ。



電車に飛び込めば確実に死ねるそうだ。だが、その後の賠償問題で親族に迷惑をかけるらしい。死ぬのに他人に迷惑はかけたくない。
それに、私はよく人身事故で電車が遅延すると舌打ちしたくなる。誰でもそうだと思う。死んでまで他人に舌打ちされたくない。



飛び降りは高さによるけど、生存確率が割と高く、死ねなかった場合、下半身不随などになり自殺する前よりも悲惨な状況になってしまったりするそうだ。
地面に叩きつけられる時、物凄い音がするらしい。その音は聞いてみたいけれど、自分の身に起こる事だから聞いてる余裕はないだろう。



首を吊るのは美しくない。有り得ない程首が伸びると聞いた事がある。なんか滑稽だ。まぁ、死んでいるのだから《有り得ない》状況ではあるけれど。
それに体内に残った糞尿を垂れ流し、死体は酷く汚いらしい。台から飛び降りた時に首の骨を折って死ぬものらしいが、折れなかった場合苦しそうだ。よって却下したい



入水自殺はもっと美しくない。ひっそりと人知れず朝靄のかかる湖に静かに入っていく。その様は中々美しい。けれど溺死体は、身体がぶよぶよに膨れ上がり、とても人間には見えないらしい。検死官が一番見たくない死体の1つとよく聞く。



リストカットはどうだろうか?
血が固まらないように風呂場に入り手首を切る。
死んだ様を想像してみた。
赤い液体の中にとても白い肌で浸かっている様は中々絵になる。
うん。良さそうだ。
ただ、一人暮らしの身。発見が遅れて腐ろうもんなら、腐臭も加味して大層劣悪だ。曰く付きとして確実に今住んでいる賃貸物件の値が下がるだろう。自分より何万円も安く他人が住むのは気に食わない。よって却下。



拳銃で頭の中身をぶちまけるというのはアーティスティクな趣がある。大きな白いキャンパスにぶちまければ、素敵な作品になりそうだ。
拳銃はコメカミにあてるのではなく、口にしっかりとくわえて引き金を引くとちゃんと死ねるらしい。脳幹を破壊するのだ。
しかし、何のツテもない私にこの平和な日本で拳銃を手に入れるのは現実的ではない気がする。




他にも沢山の自殺の仕方があるだろうが、こう考えていくと死ぬのも中々難しい。
色々な条件を考えると、練炭自殺というのはよく出来ている。考えた人は頭が良い。
睡眠薬で眠っているから比較的苦しくないだろうし、怪しげな車が止まっていれば通報があり、余程下手を踏んで発見されにくい場所で行わない限り、腐るまで発見されない。という事はないだろう。

しかし車がない。
免許もない。


なので自殺サイトを覗いてみた。パソコンを起動させて検索してみると、無数の自殺サイトが検出できた。
1つ覗いてみる。
しかし、自殺を煽動するような、肯定するような、自分を殺すという事への罪悪感を薄めようと必死な人々がそこにいて好ましくない。

別に自殺に対する倫理観をここで議論するつもりはない。
私は私の思う自殺を遂行する為に、価値観が同じ者を探す為、ネットの海を游いでいった…








どこをどうして辿り着いたのかわからない。
私の目の前に1つのサイトが顔を表した。



爽やかな黄色いパステルカラーの背景に【撮影倶楽部】と青い文字。
他に何の説明もない。
タイトルをクリックしてみると、画面が切り替わり、よく意味の解らない一文が



《あなたの物語をあなたに替わって撮影します。》



どういう事だろうか?
そもそもこれは何のサイトだろうか?
私は自殺サイトを探していたはずだ。
暫くすると勝手に画面が切り替わり《依頼の申し込みはコチラ》と、パソコンのアドレスが表示された。



興味が湧いた。


気が付くと私はメッセージを送っていた。




『私の自殺を撮影して下さい。』


(つづく)