『呉さん。』

以前にも書きました。

【『ダイジョウブカ?』参照。】

僕の

アルバイト先の

レストランの

張り切り中国人

呉さん(26)の話。

呉さんは

Barの仕事をする時もある。

Barは、お酒を出す所。

バーテンダーがシェイカーを振り…

色鮮やかなカクテルが出てくる。

云わば

レストランの花形ポジション。

上昇志向の塊の呉さん…

そんな華やかなバーテンダーに憧れない訳がない。

故に

普通のホールの仕事を勉強しながら

Barの仕事も勉強もしている。

Barの仕事は

一見、華やかに見えるが

実の所

むちゃくちゃ大変で

むちゃくちゃ細かく地味だ。

特にフルーツを使ったカクテルの仕込みは、難を極める。

使用するフルーツ…

例えば

キウイなら

キウイを色々な形に切らなければならない。

そんな作業の最中、事件が起きた。

呉さんを指導しているサブマネージャーが

呉さんに聞く

「これキウイの入った容器、二つあるけど、何?」

呉さんが

「ソッチガアタラシクテ、コッチガフルイデス」

と答えるやいなや

サブマネージャーが烈火の如く怒った

「あのなーお客様が聞いてるかもしれない距離で、商品に関する物を新しいとか古いとか言ってんじゃねーよ!お客様に古いとか聞かれたら、この店は古い物を出してんのか…って誤解されんだろ!いいか!?飲食店ではな!古い物はアニキ、新しい物はオトウト、兄、弟で区別するんだ!これから誰が見ても分かる様に、兄、弟って書いて貼っとけ!!」

と凄い勢いで囁いた。

お客様の前という事もあり囁いた。

烈火の如く物凄い勢いで、囁いた。

そう言われた呉さんは

「ハイ!ワカリマシタ!」と叫んだ。

囁きに

対して

叫んだ。

ボリュームが馬鹿になっているのかどうか分からないが

遠くから見たら

「ハイ!ワカリマシタ!」と、ただ独り片言で叫んでいる

ノイローゼか?

もしくは

神のお告げが聞こえる選ばれし

ノイローゼか?

どちらにしてもノイローゼに見えたであろう。





時が経ち…




ゆるやかに時が流れている…

その時

店の空気が一変した!


ウチの店は広い為、従業員が全員、インカムという無線機を着けている。そのインカムのイヤホンから怒号が鳴り響いたのだ!

「呉ォッ!!」

サブマネージャーが呉さんをバーカウンターで呼んでいる。

全ての仕事を投げ出してバーカウンターに走る呉さん!

僕も

自分のジャーナリズム精神に嘘をつく訳にはいかず

呉さんの後を追った!


間も無くバーカウンターに到着すると


サブマネージャーが

「何だこれはっ!!」



先程のキウイの入れ物を

呉さんの前に叩きつけた!

呉さんが答える

「アニキデス」

サブマネージャーが返す

「俺、何つったぁ?皆が分かる様に、兄、弟で書いて貼っとけって言ったよな!?」

それを受けて呉さんが

「ダカラカキマシタ!」

と語気強く反論!

すると

サブマネージャーが

「コレのどこが誰が見ても分かるんだよっ!?」



キウイの容器に書いて貼られている紙を指さした!


僕もソコに視線を向けた!

そこにはっ!?





























「哥」














見た事無い文字が書いてあった…



中国では

「哥」=「兄」

らしい。



呉さんの

店長までの道のり

は長く険しい。