『親友。』

30歳の
元俳優の親友が
故郷の岩手に帰った。

奴は
ライブに
たくさん来てくれた。

奴の
メンズエステで騙されたのと歯の矯正で出来た
80万円の借金の返済方法をともに考えたりもした。

奴は

東京に来て6年…



バイト先で出会ってから
付き合いは4年。

その間に

俳優を諦め

バーテンダーを志した直後にカクテル作りに飽き

仮面ライダー
ガンダム
V6
宇宙戦艦ヤマト
といった趣味に

惜しげもなく

湯水の様に
お金を使い

そして昨日
岩手に帰った…。





奴は
何をしに東京に来たのだろう?


最後の一週間。

奴と
東京の思い出の地を巡った。

バイト先の
六本木ヒルズ

帰り道に
よく立ち寄った
渋谷のTSUTAYA

そして

奴が
風呂なしの部屋に
住んでいた時に行った
銭湯…

そこで

奴の
背中を流しながら

たまらずに
聞いてみた…













「岩手に帰ろうと思った
キッカケは正直、何?」





自分的には
「30歳になったから…」

「両親に、長男で一人っ子だからそろそろ地元に帰って来て欲しいと言われた…」


あたりの理由かなと思った。





しかし

奴は違った。


遠い目をしながら

こう呟いた。





















「強いていうなら…

















































歯の治療が終わったからですかね?…」















本気で

「え?」

ってなった。






「オマエ、東京に
歯治しにきたの?」















とは言えなかった。




だって








奴は、その時
ものすごいハンサムな顔をしていたから。








一仕事終えた男の顔だったから。










そして
昨日…









新幹線のホームで
ドアが閉まる瞬間に

「次は、
いつ会えるかな?」と言うと
















「来年、歯の検診の際に!」
という言葉を残し

奴は東京を後にした。












歯…歯…歯…










「ハハハ…」











笑えるな…
面白いな…

















でも











寂しいな。












がんばれよ永井。
ありがとう永井。






そんな永井から
新幹線を見送った直後に
メールが来た…














【東京で生活した事を今後の糧として、地元を活性化させていきます。】













奴には東京は狭すぎた。