監督失格

「監督失格」を見てきた。

元AV女優林由美香と元恋人でもあったAV監督平野勝之のセルフドキュメンタリー映画です。



想像どおりの映画でした。


平野監督の苦悩と喪失感が痛いほど伝わってくる映画。

ここまで本人の感情も恥ずかしい部分もさらけ出してくれると、それはもう「ありがとう。」としか言えなかった。

中には、こういう映画が嫌いな人もいるだろうし、林由美香と平野勝之監督のような人間が嫌いな人からしたら嫌悪感しか抱かないだろうな。

それでも、人なんだ。
彼も彼女も、お互いに人生の中で絶対的に重大な人物だったんよね。

喪失感から脱せずに何年も苦しんでいる人は世の中にたくさんいる。

自分で分かっているのに一歩を踏み出せない。

恋人、友人、家族、夢・・

喪失感は人によって様々かもしれないけれど、自分の心と身体に染み付いてしまうほどの影響を与えてくれた人や物を失う事ほど辛い事はない。


それは平等だ。


あの映画は、同じような喪失感を抱えている人に勇気を与えたと思う。
中には余計に辛くなった人もいるだろうけれどね。



自分にとってのお葬式をしなきゃいけない。



という平野監督の最後の言葉が胸に刺さる。

彼にとって、この映画を撮る事が、由美香との別れの儀式だったのだ。


そんなエゴ・・って思う人もいるかもしれない。
でもね、彼は人生を狂わすほど、人生をかけれるほど、真剣に向き合っている。
だから、鑑賞者はそれと真摯に向き合う覚悟を持って見て欲しい。


人の生の人生を感じれる映画である。
そして、特別な出会いについて考えさせられる映画でもある。


僕も、喪失感に苛まれて頭がおかしくなりそうな時があった。だから、痛いほどわかるのだ。


遺体を発見したシーンはリアルすぎて辛い。泣き崩れるとはそうなのだな。
本当にリアルなのは、嘘に見える。
これは新たな発見でもあった。
難しいな。何だか。


一つだけ、気になった点がある。



この映画は現在の平野監督のテロップによってストーリーが進んでいくのだが、過去も、幸福な時も、由美香死後も、すべて同じ目線(感情)でテロップが書かれている

だから、冒頭からラストまで同じ視点で二人を見つめてしまうのだ。

それは作品としては広がりを狭くしていて勿体無い。


平野監督の状況を考えたら、どうしたって感情や辛さがテロップに乗ってしまうのは仕方ない。
プロデューサーや第三者が作品を俯瞰してあげれてたら、間違いなく傑作になっただろうに。
聞いた話だけど、庵野さんがプロデューサーをしているのですが完成披露試写会まで作品を見ていなかったらしいのです。おいおい、プロデューサーとしてそれは・・何だか本当に勿体無いなぁ。


「究極のエゴ」から「作品」になれなかった残念さを感じるのだ。


それでも十分すぎる映画的な広がりはあった。

観賞者は本当に覚悟を持って見て欲しいなと思える作品だった。


この作品は人生で誰でも一本は撮れる内容です。
だけれど、誰でも撮れない映画なのです。

だから、そこが、平野監督の勇気に「ありがとう。」を伝えたい理由になるのです。

僕にとってはそうでした。

 
  • コメント(全4件)
  • 白桃花♪開運画家 
    10/18 02:25

    『全身小説家』という原一男監督の作品
    作家の井上光晴氏のドキュメンタリー映画があり、肝臓を切り取るシーン本物などエグく、形容しがたいものがありましたが、何となく思い出しました。

    リアルのほうが嘘に見える←何となくわかります。作られ演出脚色されたほうがリアリティーがあり、事実のほうがブッ飛びすぎたりすることもありますね…体験上も

    私も癒されない喪失感があり、観たら共感しすぎ、その作品はもしかしたら痛くなるかもしれません

    最近、辛すぎる映画を連続して観ましたが、
    重い作品は、社会問題提議型の作品でも、人の運命の皮肉の悲劇の作品で

    作品の意図は明確に伝わったとしても

    しばしば冷静かつ分析的に客体としては捉え難くなり…淡々と観ることが出来なくなり、ハートが崩壊し、しばらく再起不能なショックを受けやすく 複雑であると同時、

    共感を通す事で、隠蔽されていた、ある種の痛みにが表に引き出され、向き合う機会となり、新たな発見がある事もあり
    時には荒療治的効果がある、そんな気もします

    痛いを痛いまま辛いを辛いままストレートに出す手法は、アートでも映画でも、確かに賛否両論です
  • † じゅん † 
    10/18 05:39


    こんな人間の生々し
    全開の映画は初めて
    観ました。

    人間の醜さと
    全部さらけ出したかっこつけない映画…

    正直観ててすごく辛かったです。
    死体発見はのシーンはね、ほんと冗談かと…。

    監督が殺したんだと
    思わざる母親の気持ちも分かりましたけど、ね

    だって、タイミング良すぎでしょ(ρ_;)

    けど、前を向いていかないとイケない。

    そう思える作品でしたね。
  • 戸田彬弘 
    10/19 05:52

    白桃花♪開運画家@多忙、値上げ検討中さん
    原一男監督の作品は、ゆきゆきて神軍が衝撃でした。
    その作品はまだ未見です。
    気になりますね!!
    荒療法ってのは本当はどうなのでしょうね・・
    時計じかけのオレンジも確か荒療法になるんでしたっけ・・
    暴力シーンを見せ付ける・
    何だか怖いですね。
  • 戸田彬弘 
    10/19 05:53

    じゅんさん
    そうですよね
    ここまでさらけだしてくださったことに、感謝したいなって思います。
    誰でも同じような顔や心をもってますもんね。
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