マドレーヌ

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裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育ち、豊かな才能を育んできた彼女。

シャルルという青年と結婚して子供を宿し、人生まさにこれからという矢先、落盤事故で夫を亡くし悲劇が幕をあける。
産まれてきた子供は、出産にともなう事故か先天性の障害児で、その顔は人の体をなしていない。お面を着けさせることで、彼女は我が子に向かう心の 折り合いを付けてゆく。

後にエリックと名付けられるその子供は、次第に天才を現し始める。3歳にして建築学の本を読みあさり、腹話術も軽くこなし、歌えば 天使を思わせる。しかし針の極端に振れた者はその気性も極端だったに違いなく、時にもの凄いヒステリックであったことだろう。こうした感受性のきわめて高 い子を初めての子として授かったマドレーヌにとって、育児の大変さは容易に想像がつく。間違いなくノイローゼであったことだろう。それは彼女がとても真摯 に子供と向き合った結果だったのだ。

そして不器用なまでに真っすぐに対峙することしか出来ない純粋すぎる人間は簡単に壊れる。

エリックを失った彼女の心の 虚は果てしなく深い。晩年の彼女の様は眼も当てられない。暗く、陰鬱に、そしてゆっくりと心の闇が全身を覆うように人生を閉じて行ったことだろう。
そんな中でも、エリックが喜びそうなモノやオペラ座建設コンペの新聞記事などを大切に箱に入れ、採っておいたりする彼女に心を揺さぶられる。

エ リックにとっても、あんなに嫌っていた母親に人生の新たな道を示されたことも興味深い。そんな彼女のピュアがエリックに受け継がれ、さらにその才能が世代 を超えて、その子供にも受け継がれてゆく。奇しくも祖父と同じシャルルと名付けられたことに、希望を感じずにはいられない。今回の公演で、そんな人間達の 紡ぐ壮大な物語を堪能いただければ幸いだ。
そして私はこの物語の途中、彼女の亡骸を目にする時、それまでの壮絶な育児という戦いを終え、自らに閉じこもって戦った彼女に「いままで、本当におつかれさまでした・・・」と語りかけたくなってしまう。少しでも彼女の人生に寄り添えたことは、私にとっても幸いなことだ。

最後に我が息子の人生を見届けていただきありがとうございました。
怪人の母こと
及川健より

 
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