願い。





「おい、妹尾ちゃん、飯喰いに行くぞ! 焼き肉でいいか?」


「おい、妹尾ちゃん、遊びに行くぞ、俺の車に乗ってな!」


「おい、妹尾ちゃん、おねいちゃんの店に飲みに行くぞ、着替えな!」




って。

今から10年以上前になりますが、毎日のように可愛がってくれたお兄さん(先輩)がいます。

自分の芝居も全部観に来てくれて、いつも応援してくれていました。




この10年、そのお兄さんは仕事の都合で日本各地を回っていました。

連絡もとれず、失礼なことをしてるなー・・と思いつつも元気で頑張っているのだろうと思っていました。



先日共通の友人から連絡が来ました。



「先輩が東京に戻ってきてるよ! 会いに行こうよ。」



という内容でした。





・・・が。


その嬉しい情報と共にもう一つ、嬉しくない情報もありました。




「実は身体をこわしてるんだわ。病気でね、間質性肺炎っていうんだけど・・・。難病指定されていて、治療法が見つかってない・・」




ヘルパーさんやボランティアの方に支えられた生活を余儀なくされているそうで、一人では十分な動きが取れないほど・・・らしく。

肺がどんどん機能を失っていく病で、機械から酸素をとり入れ続ける必要があるそうです。



私はにわかには信じられませんでした。

お兄さんは、<豪快>という文字がそのまま服を着て歩いているような人で、おおらか、面倒見がよく、ケンカなんてさせたらこの世の人とは思えないほど強くて。

マンガの世界から抜け出してきたような人・・・なのに。







友人に連れられて会いに行きました。

「お久しぶりです!」

10年ぶり。



「お元気ですかー!」


んなわけない最初の言葉を失敗しつつも笑顔で迎えてくれました。

見たところ、肌の艶や体型も、話す豪快さも何も変わりがありません。

鼻につながっている酸素チューブを除いては。



どのくらい居てよいのか、話をしてもよいのか、全然分からなかったのですが時を忘れて懐かしい話をいっぱいしました。



「台所に行ったらちょっと死にそうになって。トイレに行ったら半分くらい死にそうになって。風呂に入ったら4回くらい死にそうになるんだよ。ぎゃはははは!」



って。

全然シャレになってないのに、本人は相変わらず豪快そのもの。



なんですが、一度咳き込むとしばらく止まらなくなります。

苦しそうに顔をゆがめます。

血中酸素の濃度を示す値がぐんぐん落ちていきます。



「生きてるだけで高地トレーニングしてるみたいなものだわ。ぎゃはははは!」


・・・・







久々の再会を喜んでくれて、いつもよりもよけいにおしゃべりをし過ぎたそうです。

これ以上長居しては本当に迷惑だと思ったところで・・・



「先輩、お願いですから奇跡をおこしてくださいね。また飲みに行きたいです!」



「大丈夫大丈夫!」



ゲホゲホ咳き込みながら笑顔で見送ってくれました。







ちょっと。

何のことだか意味が分からない空間を歩いていて。

友人と言葉少なめに酒を飲み、いつの間にか帰宅しました。





目に見える、ハッキリした奇跡を・・・必ず見ようと思います。


 
  • コメント(全3件)
  • あんころおはな 
    8/20 15:11

    先輩さんの回復、心よりお祈りいたしておりま

  • 道を迷えば道を憶える 
    8/20 15:14

    元気だった人が突然病気になると驚きますね。
    それだけ豪快を絵に描いたような人でしたら本人の気力で回復できるかもしれませんな
  • おもちゃ屋だった烈 
    8/20 20:45

    私も先月、長年音信不通だった友人から連絡があり、『失明した』と…だから少し御気持ちが分かります。今時々手伝っています。
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