グレッグ その2



ども、外人さんに話しかけられた岡田達也です。







昨日の続き。



新宿駅で湘南新宿ラインを待っていた。

眼鏡を掛けた若い外国人男性が僕に話しかけてきた。

「ウツノミヤ、OK?」

いくら英語の分からない僕でも

これぐらいのことは通じる。

「この電車は宇都宮に行きますか?」

と訊きたいのだろう。

まさか

「この電車の名前はウツノミヤですか?」

だったら僕は土下座して謝る準備がある。

その電車は、ちょうど宇都宮行きだった。

僕は気軽に

「OK、OK、ウツノミヤ」

(もっと言いようがないのか?)

と言いながら指で乗るように指示した。

乗ってすぐ電車は出発した。

すると彼はポケットの中から一枚の紙切れを出して僕に見せた。

「Oyama」

と書いてある。

ん?

オヤマ?

場所?人名?

僕は慌てて頭上に張ってある路線図を見た。

湘南新宿ラインを辿ると……

あった!

「小山」という駅があるではないか!

きっと彼は小山に行きたいのだろう。

「OK、OK、オヤマ」

(学生時代何を習ったんだ?)

僕が答えると彼はニコッと笑った。



さて。

問題はここから先だ。

僕は新宿から池袋に向かっている。

乗車時間は5分きっかり。

上の会話ですでに1分は経過している。

その後の4分で何があったか。

その一部始終を書きたいのだが

なにせ彼の発言はすべて英語なので書けないのだ。

だが

最終的にどんなことを頼まれたかを書き記しておく。



「そうかい。

このでんしゃはオヤマにいくのかい?

そいつはたすかった。

じかんはどれくらいかかるんだ。

60ぷんから90ぷんくらいか。

なるほど、なるほど。

ところで

(一枚の紙切れを出して)

ここにでんわしてくれないか?

いまだ、いま。

たのむからでんわしてくれ。

え?

なぜだめなんだ?

でんしゃのなかだから?

でもでんわしてくれないとおいらはこまるんだ。

こいつはクミコのでんわなんだ。

クミコに、いま、おれがオヤマにむかっているとつたえてほしいんだ。

60ぷんから90ぷんくらいでつくとつたえてほしいんだ。

クミコのフルネーム?

……いや、しらないな。

(なぜか暗い表情)

え?

おれ?

ああ、おれのなまえはグレッグ。

ほんとうかい?

でんわしてくれるのかい?

そいつはたすかる。

あれ?

もうおりるのかい?

ここは……

いけぶくろじゃないか!

もうおりちまうのかい?

たのむ!

かならずでんわしてくれ!」



文章にするとたったこれだけだが

我ながらよくこれだけのことがヒアリングできたものだと思う。

当たり前の話だが

すべて英語なのだ。

片言の日本語も混ざっていない。

僕は4分間の間でこれだけのことを理解し池袋の駅で降りた。



そして。

ちょっと悩んだがその電話番号に電話してみた。

「もしもし」

「クミコさんの携帯ですか?」

「はい、そうです」

「今、グレッグと一緒に電車に乗ってたんですが。

彼は湘南新宿ラインで小山に向かってます。

今、池袋を出発しました。

それを伝えて欲しいと言われたもので」

「ああ、はい。

わざわざご丁寧にありがとうございます」



ありゃりゃ。

成立しちゃった。

こんな怪しい頼まれ事

絶対に断って良いと思うのだけど

興味本位で電話したら繋がっちゃった。

しかも、きっちりお礼を言われた。

悪い気はしないな。

ちょっとは役に立ったのだろう。



それにしても……。

グレッグとクミコの関係は?

グレッグは男前なのに恐ろしいほど酒臭かったのは?

疑問は多々残る。



ああ。

英語、喋れるようになりたいな。







では、また。