幼少の記憶 その9





ども、ジャスコが好きだった岡田達也です。







京都の太秦(うずまさ)に住んでいたとき

近所にジャスコがあった。



母親との二人暮らし。

しかも看護婦をやっている母は

勤務時間が日勤、準夜勤、深夜勤とまちまちで

二人でゆっくりという時間は少なかった。

そんな中

たまの休みは決まってジャスコに出かけた。

残念ながら買い物している記憶は全く残っていないのだが

その中に入っているおそば屋さんで昼食を食べるのが大好きで

そのことだけは今でもハッキリ覚えている。



注文するのは決まってざるそばだった。

それは、もちろん、

母親が頼んだものと同じものを僕が頼んだ、のが始まりだった。

ざるそばをいたく気に入った僕は

ジャスコに来る度にざるそばを注文した。

「いつものやつがいい!」

そういうと母親は笑ってざるそばを二つ注文するのが常だった。



ところが。

ある日、母親が注文時に

「ざるそばを一つと、玉子丼一つ」

と注文したのだ。

えっ?えっ?玉子丼ってなに?

その聞き慣れないメニューに

僕の小さな胸(当時は小さかったのだ)はドキドキした。



いつもは同じものを食べて

「美味しいね」

と言い合えるのに

今日はそうではない。

僕は置いていかれた気がした。



目の前に運ばれてきたざるそばと玉子丼。

僕はなんだか箸が進まず

母親が食べる玉子丼をジッと見ていた。

その様子に気付いた母親が訊いてきた。

「食べてみる?」

僕は咄嗟に頷いた。



一口食べる。

美味い!

食べたことがない美味しさだ。

「すごく美味しい」

たぶん、そのような言葉を発した。

すると母親が笑顔で僕のざるそばを引き取った。

「じゃあ、今日はそっちを食べなさい。

その方がいいでしょ?」



今にして思えば

ざるそばと玉子丼を一つずつ頼んで分け合えばいいだけのこと。

でも、そうじゃない。

大事なのは"同じものを食べてる”ということだった。



その日以来

岡田家のジャスコでの注文は玉子丼が二つに変わった。







では、また。