とちりそば



ども、要らぬ出費をしてしまった岡田達也です。







「とちり蕎麦」という言葉をご存じだろうか?

役者が舞台でセリフを間違えたり

出番に遅れたりして

そそうやとちりを犯したとき

自腹で楽屋中に振る舞う蕎麦のことだ。

「蕎麦」が「お寿司」になったり「お菓子」に変化する場合もある。





11時からDVDを観ていた。

稽古初日に成井さんから

「今回の芝居の参考になると思うので是非とも観て欲しい」

と言われた作品。

そいつはディレクターズ・カット版の180分の大作で

観終わったのは14時ちょっと前だった。

あまりの面白さにしばらくボーッとしてしまった。



まあ、でも、いつまでもこうしてるわけにもいかない。

ご飯も食べなければならないし

台本も覚えなくてはいけない。

今日はダンスの振り付けもある。

汗もかくからたくさんのTシャツも用意しなければ。



と。

携帯電話が鳴った。



珍しい。

こんな時間に電話が掛かってくるなんて……。

ん?

真柴さんからだ。

電話に出た。



「もしもし」

「おはよう。あなた、今、何処にいるの?」



次の瞬間、背中が凍った。



きっと、何かを、ぶっちしてるんだ。



人間というのは鈍くもあり鋭くもある。



「……なんかありましたっけ?」

「稽古始まるよ」



僕はスケジュール帳を見た。

17時〜と書いてある。

(実はそれは古くにもらった予定で

新しく配られた予定では稽古時間が繰り上がっていたのだ)

だが、うだうだ会話している暇はない。



「15分で行きます」



僕は静かに電話を切り

奥歯に設置してある加速装置を作動させ

家を飛び出た。





もちろん「とちりシュークリーム」を買うことは忘れなかった。







では、また。