四谷さん



ども、自分はまだまだ普通の人間だな〜と物足りなさを感じた岡田達也です。







最近お気に入りの立ち食い寿司の店に行った。

小学校の同級生に教えてもらったその店は

畳み2畳分ほどのスペースしか無く

それでも立派に商売が成立している不思議なお店。



板さんと話をしながら呑んでいた。

すると、フラッと一人の男性が入ってきた。

板さんが声を掛けた。

「あ、昨日はどうも!」

男性が応えた。

「今日も来ちゃいました」

聞けば昨日初めてこの店に入ったらしい。

2日続けての入店ということは随分気に入ったのだろう。



その男性は綺麗なスーツをバッチリ着込みお洒落なネクタイを締めていた。

が。

履き物が……。

便所サンダルだった。



僕は初対面の彼に思い切って声を掛けた。

「あのー、こんなに綺麗なスーツを着ていらして足下はサンダルなんですね?」

彼はヒョイと店の前のマンションを指差し

「ハハハ、家がね近所なんですよ」

と応えてくれた。



いやいや。

近所住まいならば尚更おかしい。

ならば足下だけじゃなく全身だってもっとラフな服装で良いはずだ。

そう、ジャージで十分。

そのことを突っ込むと

彼は笑顔を浮かべ板さんに声を掛けた。

「すぐに戻ってくるんで!」



板さんと僕は笑った。

「きっと着替えてきますよ」

「どっちですかね?

靴なのか服なのか?」



そんな一往復の会話で彼は戻ってきた。

その姿を見て僕は爆笑した。

足下が変わっている。

それは想像を超えた履き物だった。



「それ、神主さんが履く履き物じゃないですか!」

「ええ、よくご存じですね」

「何て言う履き物ですか?」

「浅沓(あさくつ)って言います」

「はあ……。

もしかして神主さんですか?」

「いえ、まあ、何というか、そういう歴史を研究してるというかなんというか」



何だか歯切れが悪い。

あまり自分の職業をバラしたくないのかな。

だったらこれ以上訊くのはやめよう、と思ったとき

「ちょっと待っててください」

再び店を出て行ってしまった。

ん?

こんどこそちゃんとした靴を履いてくるか

ジャージに着替えてくるのか

と思ったら




頭の上にこれが載っていた。

もう僕は笑うのを通り越して固まってしまった。

「そ、そんなものをお持ちなんですね……」

「ええ、まあ、持ってますね」

「それは何て言うんですか?」

「冠(かんむり)と言います」



僕は

その人の訳の分からなさ加減と

つかみ所のなさから

心の中で「四谷さん(byめぞん一刻)」と呼び始めた。







では、また。