ムスカリ 最終章

河川敷。
川を見つめ座り込んでいる雪子。
雪子の回想。

雪子「私は遠藤さんが思っているほど、きれいな人間じゃない。」
遠藤「えっ?」
雪子「私は汚い人間。」
遠藤「なに?」
雪子「私、レイプされたの。」
遠藤「えっ!?」
雪子「昔、友達にレイプされたの。だから、遠藤さんとはつきあえない。」
遠藤「…ごめん。」
雪子「なんで、遠藤さんが謝るの。」
遠藤「僕が君を追い込んだ。」
雪子「私が喋ったのは…」
遠藤「嫌な記憶を喋らせた。」
雪子「遠藤さんに追い込まれたから喋ったんじゃない!」
遠藤「正直、君がどんな過去を送ってこようが、僕には関係ない。今の君を好きなことに変わりはないんだから。でも雪子は違う。過去の嫌な記憶を未だに引きずっている。それを払拭できないで居る。そのわだかまりを僕にぶつけ、わだかまりを雪子の中で正当化しようとしてる。自分は汚い人間だと思い込むことで、安心してるんだ。
雪子「安心?」
遠藤「そうさ。安心してるんだ。変わらないで居ることに、安心してるんだ。君は、変わりたいと思いながら、変わらないで居る自分に安心したるんだ。」

携帯。遠藤からのメール。
メール「君はPTSDだと思う。」

河川敷。雪子立ち上がり叫ぶ。

雪子「私が何であんな奴のために一生苦しまなきゃいけないのよ!何だ私があんな奴のために一生嫌な思いをしなきゃいけないのよ!私だって普通に人を好きになりたいし(手を繋いで歩いているカップルに目が止まる)手だって繋いで歩きたいんだ!畜生―!!」
カップルはびっくりして手を離す。

本屋。
雪子。トラウマ、PTSDの本に目が止まる。その本に手を伸ばす。

雪子回想。

遠藤「スハマ草って知ってる?」
雪子「私と同じ名前だ。」
遠藤「そう、雪子と同じ名前。スハマ草。別名雪割草って言うんだよ。」
雪子「雪も一緒だ。」
遠藤「過酷な冬を乗り越えて、春の訪れを知らせてくれる素敵な花。」


病院。(精神科医)
雪子が先生と向き合って居る。

先生「決心して、来てくれてありがとう。どっからでもいい。好きなように今思っていることを喋って下さい。」

エピローグ
雪子の歩く足下にカメラ。遠藤の勤める花屋の前。ムスカリの花に手が伸びる。店内の遠藤にカメラパーン。遠藤ハッとして外に出てくる。ムスカリを持った手が遠藤に伸びる。

OFF雪子「私にもう一度未来を下さい。」


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