木曜日『なっちん Write a play 』

  • 夏秋佳代子 公式ブログ/木曜日『なっちん Write a play   』 画像1
ぼぉ〜とした頭を引き摺って、挽きたてのマンデリンの香りに誘われるようにスルスルと、今にも朽ち果てそうな半丸太の階段を降りていった。


キュッ。キュッ。キュッ。

何だかちょっとだけウキウキとしている心を映し出すかのように、


思わず一段飛ばしで階段を降りている自分自身ハッとした。


(私はそもそもなんでこんな事をしているのだろうか。


東葉商事入社以来、無遅刻無欠席の皆勤賞しか取り柄のなかった金井理子が、


何故、今、ここでこんな風に一段飛ばしなどしながら、ずる休みにウキウキしているのか、

全くもって理解できない・・・。)


『いい香りでしょ?』


柔らかな日射しの中で、ゆらゆらと揺れる影が、私に向かって話かけてきた。


『マンデリンは、コーヒー特有の酸味が少なく、クリアな苦味と豊かなコクを堪能できます。さ、どうぞ。』

『あの…。私…。』

『お嫌いでしたか?コーヒー。』

『いえ…。』

『すぐに朝食もお出ししますので、どうぞ。』


階段と同じ樹で作られているのであろう半丸太のテーブルの上には、


真っ赤なさくらんぼがちりばめられたクロスがかけられていて、


まるで、自分が森の中に迷いこんだお姫様にでもなったような気分になる。


キュッ。キュッ。キュッ。


また心が音を立ててきた…。


『お腹空かせてたんですね〜。今、すぐに…』


『違います!お腹の音じゃありません!!』


『あ、レディに向かって、失礼しました…。どうぞどうぞ!』


(レディって、益々バカにしてるの?ったく!!)


そんな私の心の叫びがまるで通用しないこの乙女ンズに、


あっさり切り株のような椅子に座らされていた。


キュッ。キュッ。キュッ。

(まただ…。何なの?コレ。私はウキウキなんかしていない!!ウキウキなんか!!絶対に!!)


『分かってますから、さぁ、冷めないうちに食べましょ。』

『何も言ってませんよ…私。』

『はい。何も言ってませんよね。では、いただきます!』

『………。いただきます……。』


さらさらと流れ出すその声に思わず流されてしまった私は、


思わず綺麗な丸を描いた黄身に、手を伸ばしていた。

『お い し い…』