木曜日『なっちん write a play 』

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長々書き込んでいるこのお話を楽しみにして下さっている方々


本当にありがとうございます


さてさて、先週の続きですよぉ~


またまた美里ちゃんの回想の世界へ


孤児院。みんなの手作りのクリスマスグッツたちが飾られている。
橘と美咲が、パーティーの準備をしながら


橘:  ね、美咲ちゃん、来年からここ出て一人暮らしするんだよね?

美咲: はい。

橘:  美里ちゃんも一緒に出て行くの?

美咲: 美里は高校卒業するまでここに置かせてもらえたらって思ってます。

橘:  そうだよね。東京のひとり暮らしですら、働いてるのに親に仕送りしてもらってやっと生活できてる状況だもんね。ましてやご両親のいない美咲ちゃんたちにはちょっと厳しいよね。

美咲: はい。すいません。美里の事、よろしくお願いします。

橘:  あ、ごめんなさい。そういう意味じゃなくて・・・。あ、何か私変な事言ってごめんね。

美咲: いえ。でも、橘さんがいてくれるから私も安心です。

橘:  そ、そう?いや〜、何か照れるなぁ〜、そういうの言われなれてないから。でも、寂しくなるね。たった1年だったけどさぁ、美咲ちゃんがここにきてくれてから、美里ちゃんもみんなも本当によく笑うようになったもん。

美咲: そうですか?橘さんの「変なおじさん」の物まねには適いませんよ〜。それに、時々、美里やみんなの顔見に来ますから。

橘:  そうだね。一生会えないわけじゃないしね。じゃぁ、より一層「変なおじさん」の腕を磨かなきゃ!
    

橘、美咲、笑っている。


美咲: 橘さんって何でここに就職したんですか?

橘:  寂しがり屋だからかな・・・(笑う)ほら、ここにいるとさ、みんな本当は血も繫がってない赤の他人なのに、毎日一緒に暮らしているからか、本当の家族みたいに取っ組み合いの喧嘩したり、馬鹿みたいに大騒ぎしたり・・・。なんかそういうのいいなって思って。
美咲: そうですよね。いつだったかな。ここで夏祭りしたじゃないですか。区のボランティアの人たちが金魚すくいやってくれて。で、健太くんが10匹すくったのは絶対インチキしてるって大騒ぎになって・・・。健太くんは怒って1週間も口きいてくれなくて、

美咲: かばった美里は健太くんの事が好きだからだとかひやかされたり、

橘: 皆もごめんねって言うタイミング逃しちゃって変に意地張って・・・。

美咲: 今、思うと懐かしいですけどね。

橘: ホント。

美咲: いつかみんなばらばらになって、ここで暮らした事も忘れちゃうのかな?って思うと、時々、眠れなくなるんです。私。美里の事も結局置いて行くのは事実だし・・・。

橘:  『置いていく』じゃないでしょ?迎えに来る為の準備をしに行くんでしょ?

美咲: そうですね・・・。

橘:  でも、羨ましいなぁ〜。姉妹がいるって・・・。私ね、一人っ子なんだよね。両親はいても、2人とも働いてたからうちに帰ってもいつも真っ暗な玄関開けて、自分で電気つけて・・・で、部屋中の電気つけて、興味も無いのにTVなんてずっと付けっぱなし。で、いつも帰ってきたお母さんに、『電気の無駄遣いばっかりして!』って怒られて・・・。喧嘩する相手もいない私にとっては、喧嘩できる姉妹がいるって事自体が羨ましかったりもするんだよね。それにさぁ、ここにはいっつも誰かが誰かの帰りを、今か今かと楽しみに待っててくれるでしょ?

美咲: (うなずきながら聞いている)

橘:  待っていてくれる人がいるって事も、待ちたいと思う人がいるって事も、本当に幸せな事なんだなぁ〜って、昔ボランティアでここに来たときに感じたんだよね

美咲: そうなんですか・・・。

美咲: あ、そうだ!今年で美咲ちゃん、美里ちゃん2人揃ってのこの『若葉園』最後のラスト・クリスマスなんだよね。じゃぁさ、いつも2人で歌ってたあの歌、リクエスト!!

美咲: 了解しましたぁ〜!橘隊長!


とそこへ美里が入ってくる。下手のもみの木に靴下をぶら下げる。


美咲: 何お願いしたの?美里。

美里: (無視)

橘:   美里ちゃん、何、お願いしたの?

美里: (橘に向かって)お願い事は話した時点で叶わなくなるらしいです。

橘:  あ、そうか、そうだよね。じゃぁ、私のフミヤ様もなしってこと〜。がっかし・・・。(笑ってみせる)
  




美咲:  美里・・・。何か言いたいことがあるならいいなさいよ。

美里:  別に。

美咲:  なら、なんでそんな態度取るの?

美里:  別に。関係ないでしょ。

美咲:  関係なくないでしょ。姉妹(きょうだい)なんだから

美里:  姉妹(きょうだい)?へぇ〜、お姉ちゃん、一応姉妹だと思ってたんだ。

橘:   美里ちゃん。

美里:  だってそうでしょ?自分だけ大学決まって、家探して、妹置いてとっとと出て行く人をお姉ちゃんだと呼んであげてるだけでもありがたく思ってもいいくらいだよ。

美咲: ・・・・。

橘:   美里ちゃん、いくら何でもそれは言い過ぎだよ。

美里:  何で?何で橘さんまでお姉ちゃんの味方するの?意味分からない!(と飛び出して行く)

美咲:  美里!(と追いかけて行く)


橘、おもむろに飾りつけの中にあった折り紙になにやら書き込み、クリスマスツリーに結びつけて奥に去って行く。次週へ続く・・・