木曜日『なっちん write a play 』

遅い時間にすみません


もの凄いモノを見せられた堤真一さん×草なぎ剛さんの『K2』観劇で、ちょっと興奮覚めやらぬ私ですが・・・


木曜日は、私のオリジナル作品をご紹介


第1回目は、クリスマスにちなんだお話です


併せて、第2回目のテーマを、皆様からご提案頂けると嬉しいです


お待ちしておりま〜す



ホワイトクリスマス


冬の晴れた日の午後、ひとけのない公園の芝生で、宮本(44)はトランジスター・ラジオを聞いていた。古いラジオからは、軽やかなリズムの音楽が耳に心地よく流れていた。すぐ傍に座っていた美里(14)が不思議そうに宮本に尋ねた。傍には一本のもみの木が聳え立っている。


美里: このラジオ、どうしたんですか? こんなのはじめて見たわ

宮本: 珍しいだろう。これはね、僕の祖父・次郎じいさんの形見なんだ



宮本は、今は亡き祖父の形見トランジスター・ラジオを愛おしそうに触る。美里はそれを手にとると、珍しそうにいろいろと角度を変えて見ていたら、ダイヤルに触ってしまい、チャンネルが変わった。そのチャンネルからは『ホワイトクリスマス』の曲が流れてきた。


美里: この、音楽!お姉ちゃんの好きだった曲だ!

宮本: おじさんが若かった頃、流行っていた音楽だよ

美里: そうなの?私も聞いたことがあるわ。とても素敵。この古いラジオで聞くのにぴったりだわ
   

ラジオからD・Jの声が曲と共に流れてきた。

DJ: さあ、今お聞き頂いてますのは、楠木町に住む宮本次郎さんのリクエスト曲

宮本: えっ?楠木町の宮本次郎さんっておじいさんと同じ名前だ

DJ: 「メッセージ紹介しますね。『一郎兄さん、大事にしてたレコードを貸してくれてありがとう。ぼくもこの曲が本当は大好きなんだ。なのに、ぼくは、いつも成績優秀で、友達もたくさんいる一郎お兄ちゃんがとっても羨ましくてかわないなっていつも思ってて、大嫌いなフリをしてました。ごめんなさい。だから、一郎兄さんのためにリクエストをします。それから、クリスマスは一緒に過ごそう』次郎さんの想いが、一郎兄さんに届くといいですね!」


「ホワイト・クリスマス」がしだいに大きくなる。
美里はその歌を聞きながら、D・Jが読んだリクエスト葉書のことを考えていた。


美里: 私、行きます。

宮本: どこにだい?

美里: 忘れ物を取りに!

宮本: そうかい、気をつけて行っておいで。


美里、上手に駆け出し行く。宮本、微笑みながなら美里を見送りラジオのボリュームを更に上げる。曲が大きくなり、やがてカウンターだけの殺風景なとある1室があらわれる。その1室には、遺失物係と書かれたプレート。男1、なにやらずっと絵を描いている。男2、レコードを持ってひどく感激している。


男2: これ、知っています?

男1: 何

男2: これ、これですよ。

男1: (見向きもせずに絵を描きながら)知らない。

男2: ちょっと!見てもいないくせに。ちゃんと見て下さいよ。

男1: 見たよ。

男2: 見てないじゃないですか!ほら、ちゃんと見て下さいって(と男1の顔の前まで持っていって見せる)

男1: (手を止めてジーっと見つめて)はい、見ました。

男2: で?どうですか?

男1: え?何が?

男2: え?何が?って・・・。ったく、宮本さん全然興味ないでしょ?

男1: ないよ

男2: だったら食いつかないで下さいよ!

男1: (絵を描きながら)丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん

男2: いいんだよなぁ〜、この曲。LEAFって喫茶店があったんですよ。僕ん家の近くに。で、そこのマスターが午後三時になるとこの曲、いつもかけてて・・・。

男1: (絵を描きながら)丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん、丸かいてちょん

男2: ちょっと!聞いてます?宮本さん・・・。てか、どんだけ丸かいてちょん書いてるんですか。すげー数の丸かいてちょんだな・・・。

男1: ドラエモン。

男2: は?

男1: だから、ドラエモン。ほら。(と絵を見せる)

男2: ホントだ。

男1: ね(と得意げに)

男2: でも、そんな絵描き歌でしたっけ?ドラエモン。

男1: そうだよ。

男2: でも、何か違うような気がするんだよなぁ〜。

男1: じゃ、これ、知ってるか?とんがり口ばし 小鳥さん小鳥さん アンパン2

男2: おばQですか?

男1: ぶぶーっ! 食べちゃって お腹がいっぱいになっちゃった (コロリンコ) それを見ていた 狼が狼が目玉をギョロリ 光らせて お口を空けて狙っていた 「そんなことはさせないぞ! ぼくらのパーマン できあがり (パワッチ!)

男2: ・・・くぅ〜、やられた。引っ掛け問題ですか。ずるいですよ、宮本さん。

男1: (得意げに)むふふ。


とそこへ美里が入ってくる。


美里: あの〜、私・・・。

男2: どうされましたか?

美里: あの・・・。『とにかく急がなきゃ!』と思って走ってたらここの看板を見つけて・・・。

男2: そうですか。

美里: 忘れ物をしたんですが、ここで大丈夫なんでしょうか?

男2: はい。大丈夫ですよ。何を忘れられたんですか?

美里: どう説明すればいいのか分からないんですけど・・・何か大切なものです。

男2: 何か大切なもの・・・。それは具体的にはどんなものでしょうか?

美里: とっても大切なものなんです。

男2: そうですか、それはそれは大変でしたね。で、どんなものですか?お財布ですか?家の鍵とか?

美里: ・・・。それが分からないんです。

男2: ・・・。分からない・・・ですか。

美里: はい。はっきりとは分からないですが、何かとても大切なものなんです。

男2: では、まずこちらにお名前とご住所、年齢、いつそれを忘れてしまったかをお書き下さい。あ、あと、その『大切なもの』を忘れた場所も詳しくお書き下さい。

美里: はい・・・。


男2、紙と鉛筆を渡し、目の前にある椅子に美里を促す。美里、座っておもむろに書き始める。男1は、チラッと美里を見るがまた絵を描き始める。

男1: (時計を見て)そろそろ始めるか。

男2: はい。(美里に)描き終えたら声かけて下さい。奥の倉庫にいますので・・・。

美里: はい、分かりました。


男1、2奥の倉庫の方へ去って行く。


続く・・・。(続きは来週木曜日です)