★★★★★★とっておきの話(聴覚)★★★★★★

  • 前野重雄 公式ブログ/★★★★★★とっておきの話(聴覚)★★★★★★ 画像1
久々に、あれはもう40年くらい前になるのか?!そう気づいて驚いた。
王さんらから直接聞いた話である、とても感動した。

先週、TBSラジオの「伊集院」さんの番組で、『視・聴・覚にかかわる話』を募集していたのを朝、シャワーで耳にして、そのとたん忘れていたこの話を思い出したのである。
やっぱ、ラジオはいい。届く部分がどこか別の部分だ。

それに応募しようかと思うほど(採用への)自信はあったけど、引きかえの賞品が「番組ステッカー」であり、BEST賞も「ヤマザキのギフトセットを1名様に」というものだったのでやめた。
だって、「水ようかん」「フルーツゼリー」なんてちっとも嬉しくないし(ソレニ1メイナンテね〜 笑)

巨人軍V9の際、ご褒美旅行で川上監督はじめONら夢のような人がジャンボ機をチャーターし、ボクのいるハワイにやって来た。

その際、約一週間というもの大手出版社の依頼もあって、王さんの密着取材兼通訳兼ボクのおんぼろグルマで運転手をつとめて差し上げたのである。

最初の晩は、ボクの当時のGFがカクテルウェイトレスやっているPカイウラニの、隣のホテル地下プライムリブの店「Chuck's」に、日本から来た番記者10名ほどを引き連れて王さんが、全員のディナー&カクテルを面倒見をしてくれたのである。

そもそも、迎えに行った宿泊先のロビーで行く当てもなく、初めてのハワイとあってタムロするだけだった記者たちに王さんが声をかけた、
『キミら行くとこないんだったら、この人が現地のおいしい店連れて行ってくれるから、一緒に行こうや』…で付いてきて集団となったわけだった。

店に入っても王さんはというと、デンと座っているわけではなく、席を立ってまるで秘書みたいな恰好で背を丸め、テーブルに座る記者全員を回っては、飲み物、オーダー(スープの種類、ライスorパン!!)、「焼き加減」まで訊き!!、ボクがそれをメモをして黒服に伝えるのである。

そして食事も終わる直前となって、氏はトイレに行くと見せかけて絶妙のタイミングで、全員分のお勘定をすっかり済ませてしまうのである。

それはこれから起こるであろう「ご馳走様でした、すみません」という儀式を、極力、大したことない挨拶で済ませること…、それを第一義にしたいという深謀から自然に出たもの・・・と横にいるボクには見えた。

すべてが万事、これがお人柄というものだろう。こうした「人間ができる完璧」という作法をそれから一週間、ボクは目の当たりにする。
王さんは「完璧」だと思う。

冷徹に気を配っておかねば、『完璧な人である』ことには冷たさがつきまとうものだ
だが、王さんの完璧とは『完璧と感じさせない、「よく考えてみたら完璧」だった』という遅効性の完璧さなのである。

ボクは王さんには無条件で学んだ。
誰もが一度はあこがれ追求する『完璧な人間像』。

今はやりの、ウツ病へと向かう引き金も、自己愛からくる完璧主義への希求から始まる…原理が、精神病理学では一般的だ。
それをナイーブな人格によって「ついつい純粋すぎるがあまり、呼吸も心も煮詰まってしまう若い子たち」に出会うたび、ボクは氏の話をしてはマインドのマッサージをすることにしている。

最近、政治の世界で帰化していいかげん経った女性の国籍がクリアかどうかをめぐって、大の男どもが敵方はともかく、味方の野郎どもまでが彼女の国籍の処理をめぐってあれこれイジメているように映る。なんとみっともなく矮小きわまる人間たちなのだろうか。

だったら、いつまでもこの甲子園優勝投手の王少年を、「台湾籍だから」といって60年前に国体から情けなくも締め出した愚挙から、ひとっつも進化していない野蛮人の集団イジメが公然と、そしてもっともらしく行われている。
ボクはむしろそんな奴らと同じ大地を踏む『日本籍である自分』が恥ずかしくてたまらない。

★★★★★★それはさておき本題だ、かつて神宮球場の外野席は全席芝生であった。

王さんが引退されるシーズンに2年先駆けて1978年に、敷かれた芝生はすべてはがされて、現在のコンクリート席へと改装されていった。

たしかにそれまで芝生はボロボロで、所どころ「断崖」とか、「切り通し」みたいな場所があり、それらになど当たったら悲劇だった。
そこへある視覚障碍者が、巨人戦というとライトスタンドにやって来ては試合が終わると帰ってゆく姿が目をひいた。
たちまち、神宮の常連たちに知らぬ者はいないほどひそかな注目を集めており、人々は好奇の目で『観戦』する彼を眺めていた。

そんな不思議な「巨人ファン?」の話が、球場関係者を通じて巨人軍チームスタッフにも伝わってきた。
『ナイターの雰囲気がいいのかな。』
『華やかなにぎわいが好きなんだろう。』と、周囲は勝手な解釈をしていった。

ところが、彼は王さんのホームランだけを、ひたすら期待していたのである。
彼はウグイス嬢の『3番ファースト 王』という瞬間、聞き届けるとじっと身を固める・・・。
果せるかな、ホームラン!!
王さんは神宮ではホームランを数多く放った。

目を閉じたままの彼はホームラン?性の打球音が響いた瞬間、全神経を集中する。
大歓声の中から「感動の音だけ」をかき分けて抽出し、聴覚ふくめボディ全体へと吸収するためである。

『「ドスン!」』ボールが人々をかき分けて芝生に直接着弾すると、小さな地響きとともにわずかな音が伝わってくるのである。

それは他の誰もが気付かぬことだったけれども、王さんのホームランボールが(右翼)ポール際はもちろん、「バックスクリーンに近い右中間」であっても、彼が神経を集中していると「地面が響いてくる」のを味わえるもの』だそうである。

それが芝生席ならではの良いところなのであった。

王さんはその話を耳にすると、感動してサインボールを贈った。
そして後年、神宮外野席の工事計画のニュースを聞くと、まず第一にこう云ったそうである。
『神宮が芝生席でなくなったら、あの人が淋しがるだろうに』

人格に国籍などのようなものは要らない。

 
  • コメント(全2件)
  • りん○ 
    7/29 08:00

    王さんのパネル(一本足)をずっと部屋に飾ってました。
    それだけで力を貰える、そんな存在です
    前野さんのお話を伺って、もっと王さんが好きになりました
    試合時間を短くするのにはどうしたらいいかというインタビューを12球団の監督に訊いた時、王さんだけが逆の発想をされたのが鮮烈に残っています。
  • 前野重雄 
    8/5 18:25

    女にしておくのがもったいないなあ、じつに!
  • GREEにログイン(新規登録)するとコメントを書くことができます。
    ログイン(新規登録)