鎌倉女子大学の建学の精神の一つに、時を大切に、という言葉があります。

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人間は、終わりがあることを意識して生きれば、おのずと一日一生、になると思います。

僕も、今日を一日一生、として生きています。 

「一日一生」
       
橋本喬(観光企画設計者社長)

        
『致知』2003年8月号

十年前の十月、いつも通り出社した私を
待ち受けていたのは東京地検特捜部だった。

故・金丸信元自民党副総裁の脱税事件を契機に
明るみになったゼネコン汚職。

土建国家・日本の暗部にメスが入り、
収賄罪で県知事や自治体の首長、
ゼネコンの役員クラスが多数逮捕された。

私もその一人である。

大成建設の営業本部長を経て副社長になった矢先、
宮城県発注工事にからみ、県知事および
仙台市長へのヤミ献金容疑が発覚。
私と仙台支店長と副店長が贈収賄で起訴された。

営業本部長はゼネコンの営業活動の総元締めであり、
必要な資金はすべて私の管理下に置かれていた。

支店長と副支店長が
「知事と市長に少し何かしなくては」と言った時、
私は「そうだね」と答えた。

それが業界の通例だったし、そうしなければ
他社から取り残される。

また、われわれだって贈収賄が
刑事罰に相当することは百も承知。

あくまでも「選挙資金」として渡したのであって、
相手が私的に使っていたなど知る由もない。

「選挙資金と言っても、それに対する見返りを
 期待していたでしょう? 何も期待せずに金を出しますか」

 取り調べの席で検察は言った。

「そりゃ出しませんな」

と答えると、私は即刻逮捕された。
自分が金を渡してもいなければ、いつ渡したかも知らない。

相手が選挙に使わず、勝手に私腹を肥やしていただけだ……。

言いたいことは山ほどあった。

だが、腹を括った。
すべてを受け入れることにした。


拘置所での生活は、判で押したように
規則正しい生活だった。

七時起床、九時就寝。
十五時から体操で、三度の食事の時間も決められていた。

よく、所内の飯は「くさい飯」といわれるが、
慣れればそれほど不味くもなくなった。
週に三度は風呂に入れたし、半月に一度は床屋にも行った。

とりたてて生活に不自由はなかったが、
「ここは別世界だ」と痛感することは多かった。   

初めこそ罪状認否の取り調べもあったが、
早々と罪を認めたら特にすることもない。
独房の中で、これまでのことを考えてみたこともあった。

早大の建築学科を卒業し、
大成に入社したのは昭和三十三年。
東京タワーが完成した年だった。

戦後日本の復興の象徴ともいえる高層建築物を数多手がけ、
四十九歳で取締役東京支店長、
営業本部長を経て副社長になった時は、
「大成初の昭和二桁の副社長」と言われた。

当然、耳に入ってくるのは「次期社長」の声――。


狭い部屋で思いを巡らせても、すぐに行き詰まってしまう。

それに考えたところでどうしようもないのだ。

有り余る時間で、私はやたらと本を読んだ。
拘置所にいた四か月間で百冊以上読んだだろうか。
家族からの差し入れも、本が一番嬉しかった。

特に好んで読んだのは、徳川家康や織田信長などが
登場する長編歴史小説。

別に自分の姿を重ね合わせたとか、
彼らの生き様に鼓舞されたとかいうのではない。
ただただそのストーリーに集中し、没頭していた。
何も考えなくて良かった。

拘置所で年を越し、裁判も一段落した一月下旬、
いよいよ出所の時がきた。
ああ、この生活も終わったんだ。

事態を冷静に受け止めている半面、
誰かに会ってむしょうに話をしたかった。

この四か月、限られた面会時間に家族や弁護士としか
話ができなかったことへの反動だろう。

門をくぐると大勢の人たちの姿が見えた。
私は驚いた。そこにいたのは大成建設の仲間たちだった。


「ご苦労さん」

「お疲れ様でした」


次々と皆に労いの言葉をかけられ、
私は急に現実の世界へ戻ったような気がした。
会社から用意された車に乗り自宅へ行くと、
そこにもたくさんの同僚たちが私の帰りを
いまや遅しと待ち受けていた。

その輪の中に入った時、
「分ってくれる人はたくさんいる」と心から思った。

人生は「一日一生」である。

前から好きな言葉だったが、事件を契機に
その思いはますます深くなった。

人生は一日の積み重ねであり、一日を全力で生きて、
初めて人生をまっとうすることができる。

時には躓き、誤解もされる。
私も逮捕され、社会に大きな影響を与えた。
失ったものも多く、私の肩書きと付き合っていた人たちは、
潮が引いていくように離れていった。

しかし、「人間・橋本喬」と付き合ってくれていた人たちは、
私を支え、励まし続けてくれた。

現在籍を置く観光企画設計社の創業者であり、
会長である柴田陽三氏とは二十数年以上の付き合いになる。
ホテルオークラをはじめ、
全国のホテル設計を請け負っている柴田氏の事務所は、
大成時代の取り引き先だった。

「絶対にいい仕事をして、お客様のお役に立ちたい」
という一心で仕事に取り組んできた私の姿勢が、
柴田さんには伝わっていたのだ。

事件が一段落した時、
「ちょっとうちの会社を手伝ってよ」と言って、
私を副社長として迎え入れてくれた。

いずれ訪れるであろう死の床で、
これまでの人生を振り返った時、
私は幸せだったと思いたい。

結局最後に自分を満足させるのは、
「人様のお役に立った、人様に必要とされた」
という思いだけである。

出世をして金持ちになっても、
死に際に誰も来てくれないような人生は悲しい。

毎日毎日人に優しく、親切に、お役に立つ。
私はそういう人生を送りたい。

 
  • コメント(全23件)
  • シャカシャカ 
    12/18 10:31

    結局私腹を肥やすためにあんたは生きてんだ。

    気の問題はとても深く解釈するには、時間が必要でしょう。
  • *.花.* 
    12/18 10:31

    一日一

    良いお話し
    ありがとうございました



  • ぺりぱとす☆))) 
    12/18 10:43

    一日一

    新宿歌舞伎町駆け込み寺の額にも掲げてありましたぁ

    昨日の渡辺謙・南果歩ご夫妻共演のドラマスペシャルで…

  • _. 
    12/18 10:43

    その人自身を深く知るつきあいをしていきたいと思っています。

    また、相手にもそうであってもらいたい
  • アルプスの少女ハイジ 
    12/18 11:03

    きのぴー先生
    はようございます
    つも
    つも
    に染み
    素敵なお話し
    りがとうございます
    みなが
    涙が
    ぼれています

    出所の迎えに
    社の沢山の仲間達


    自分を分かってくれる人がいる


    を認め
    自分に向き合った
    の時か
    素敵な未来に繋がって来たと思います


    人生終わる時
    の役に立てて良かっ
    笑顔で
    から思えるように
    2月に亡くなった安らかな笑顔の
    のよう
    今日も
    域の草刈りに出掛けている
    頼厚い
    のよう
    1日1
    素敵に過ごしていきたいと思いま


    きのぴー先生
    年の反
    これからの一生を改めて
    える事ができました
    当に
    りがとうございます


    きのぴー先生
    しく毎日です
    お身体気をつけて下さいねo(^-^)o

    これからも
    しくお願いします

  • よろにゃん 
    12/18 11:23

    心にしみる素敵なお
    ありがとうございま

    どんな境遇でも自分を分かって待っててくれる人達、ほんとにありがたいですね
  •  
    12/18 13:19

    泣かせてくれるねぇ~~~

  • ☆ハイジ☆(GREE復活) 
    12/18 15:48

    人のお役に立つ人間に私もなりた

  • みい(体調不良…イベ微力です) 
    12/18 16:07

    キノピー先

    こんにちは。
    じっくり読ませて頂きました。
    私も、人の役に立っているのか…自分を必要としてくれる人はいるのか…いつも考えてしまいます。
    人の役に立ちたい
    必要とされる人間になりたい。
    人として…感謝の気持ち忘れずに
    人として…優しい気持ち、思いやり…忘れずにいたい
    一日一生、生かされている事に感謝し、一日一日を大切に生きて行きたいです。
    キノピー先生、ありがとうございました

  • ぺるもも きんたLOVE 
    12/18 21:07

    私の学校では
    時に親切なれ
    と、教訓があります

    同じ意味だと思います。
  • エアまま 
    12/18 22:35

    一日一生♪

    私も 人の役に立つ 仕事をしたいと思います
    現在 介護サービスの訓練校に通って勉強中です 来年からは 障害者や 高齢者に 優しい 介護職員になりたいです
    生 書き込み ありがとうございました〜♪びっくりしましたが 嬉しかったですよ〜

  • みかやん 
    12/18 23:11

    木下医師 今日 淡路島に きてませんでした

  • MOI 
    12/18 23:12

    いい話ですぬ
  • ぉかあさん♪ 
    12/19 00:07

    じっくり読んでしまいました。
    今年1月無事出産し
    自分はお礼に何をしたかなと考えてしまいました。

  • ミライ 
    12/19 00:20

    いい言葉ですね。
    頭の言い方はいつも色々な事を考えていますね。真面目なんですね
    私は毎日の小さなくだらない、人々とのでき事に振り回されたりして、情けなく思ってます。
    真っ直ぐ生きたい!
    間違いは間違い、イケないことはイケないこと。恥ずかしくないいき方をしていきたい。
  • まき(コメ返せなくてごめん(-o-;)) 
    12/19 01:23

    病気してから特に考えるようになりました。1日1日楽しく生きてたいと思いま
  • 三ツ野菜ダー☆ 
    12/19 02:02

    いいお話ですね。
    心にしみました。私も、人のために生きられる人間になりたいと改めて思いました…。

    たいし君も将来先生からお話を聞くのでしょうね☆

    ジャガーさんのブログの方が多いですが、たいし君が本当にかわいくて、毎日ブログ見ています^^☆

    私は子供がいないのですが、ブログからではありますが、日々の成長や子供の持つ力を感じ、勉強させてもらっています。日々変化があることに驚きながら、また私もやっぱり赤ちゃんがほしい、共に歩み成長したいという気持ちが強くなりました^^☆


    また先生のブログでもたいし君の成長記が拝見できたらと思います
  • しらこ 
    12/20 00:36

    いいお話です
    人にやさしく
    日忘れないように つぶやきます
  • くー 
    12/21 13:44

    駄目ですよ、えなりさん
    メガネかけてもごまかされませんよー
  • ぴぽ 
    12/21 19:39

    本当に地位より繋がりですよねっ
    書きだけでは出所した後、待つ人も迎え入れてくれる人もいなかったと思います・・・

    楽しく読みませていただきました(o^∀^o)

  • よい子 
    12/21 22:07

    話が深いですね!
  • まいこりん 
    1/8 03:21

    こちらから挨拶しても、恥ずかしいのか何なのか、目も会わせずスルーする学生たち。与えられることが当たり前になり、受け身な彼ら。虚ろな瞳でテストの点数、成績、評価ばかりを気にする学生に、社会人として、私は何を伝えることが出来るだろうか、と、ふと思いました。肩書きをかざす教育現場の管理職
  • ノン 
    3/25 19:02

    はじめましてノンで
    年齢は41歳の独身で
    男性で
    病気はてんかん発作です
    しよければ返事待ってます。m(__)m
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