松方弘樹さんから教えて頂いたこと

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生前、松方さんに何度か食事をご馳走して頂きました。

気さくで優しいお人柄はもちろんなのですが、その雰囲気が相まって僕は大変失礼な質問をしてしまったことがあります。

「松方さんは、好きな俳優さんはいらっしゃるのですか?」

一瞬間が合って、松方さんは表情を変えずに僕の眼を見て、こうおっしゃいました。

「先生ね、役者は皆、物まねなんだよ」

一瞬心の中で、え?この答えはどんな意味なんだろう? どのように返事をしたらいいのだろう。戸惑っている僕にさらに続けます。


「この役者さんが良いと思ったら、徹底的に真似るんだよ。続けていくうちに、いつのまにか自分の演技になっていくんだよ。」

この言葉は当時の僕にとって、目から鱗、でした。

「ありがとうございます」

こう答えるのがやっとの僕に、さらに教えて下さいました。

「僕はね、萬屋錦之介さんの真似をずーっとしてきたんだよ。真似をし続けるうちに松方の演技が完成したんだよ」

当時の僕は、テレビ出演時の立ち振る舞いにとても悩んでいました。

バラエティ番組の出演が多かった頃から、情報番組の出演に切り替わっていく頃でした。ふざけていいのか、出過ぎてはいけないのはもちろんですが、アンカー(司会者)の流れを崩さないようにしなければいけないけど、しゃべらないのはもっとダメ。強い意見を言うと叩かれる、意見を言わないとつまらない、一体全体どうすればいいのか。



僕は自分のゼミナールの学生に、一番初めに教える事が「私は女優」です。

なりたい自分を、最も簡単に、お金をかけずに手に入れる方法であると教えています

口調、ふるまい、ファッション、その他徹底的に真似る、それを続ける。

殆どの学生は、素直に実行してくれます。在籍する2年間で、全ての学生が別人の様に変身します。

7年間のゼミナール担当教授として、松方さんに教えて頂いた方法の素晴らしさを実感しております。

「学ぶ」の語源は、「真似ぶ」だとご存じの方も多いのではないでしょうか。

皆さん、僕は何方を真似しているか、お分かりですか?



もう一度、松方先生にお会いして、お話を伺いたかったです。もうお会いできないなんて、残念でなりません。

松方先生のご冥福をお祈りします。