ミミの本性!?

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だいぶご無沙汰してしまいました。一昨日、帝国ホテルにてジ・インペリアル・オペラ、藤原歌劇団公演「ラ・ボエーム」が終演しました。

4月から、いきなり週に20人の学生をレッスンする生活が始まり、大学での仕事と自分の演奏活動との両立や時間の使い方に試行錯誤した、この一ヶ月でした。

大学で教えているオペラ歌手の先輩方はたくさんいらっしゃいますが、みんなこんな大変なことをしていたのか!という思いです。教えることにも慣れていけば、もう少し余裕ができるのかしら。

そんなわけで、これまで私にとって最も緊張する戦場であったオペラの稽古場が、なんだか慣れ親しんだホームのように思えて、レッスンを終えて夕方稽古場に行くとホッとしたりして(笑)。

そうして稽古してきた今回の「ラ・ボエーム」。私にとって最大の挑戦?は「ミミは3年前からロドルフォを狙っていて、彼を落とすために(笑)意を決して今夜ここにやってきた」という演出上の設定でした。

「ラ・ボエーム」というオペラ、ご存じの方も多いと思いますが、お針子のミミが近所に住む詩人ロドルフォの部屋にロウソクの火をもらいにやって来て、そこで自分の部屋の鍵を落としてしまい、真っ暗闇の中鍵を探しているうちに手と手が触れて、二人は恋に落ちる…という、話していてもこっぱずかしいようなお話です。

もちろんプッチーニは大まじめに「ミミ可愛いなぁ!!」と思いつつ書いた音楽に違いありません。でも、女の目から見ると「なんで同居しているロドルフォの友人たちが出かけた瞬間にタイミングよくミミが来るのか」、「アリアの中で『一人暮らし』をアピールする必要があるのか」、などなど「すべてはミミの計算なんじゃないか説」が頭をもたげてくるのは事実。

というわけで最近はちらほら「ミミがもともとロドルフォを狙っていた」という演出も見かけます。今回の帝国ホテルオペラでも、最初の稽古で演出の馬場典雄さんから、その設定でいく旨お話がありました。

ですから、ミミは鍵を失くすのではなくロドルフォの目を盗んで自分で床に置きますし、いったんつけてもらったロウソクを自分で吹き消します。

その上で「まぁ!私ったら鍵を落としてしまったわ、探してくださる?」だの「キャー!火が消えてしまったの、点けに来てくださいな」だのと可愛いらしく言うのですから、これはもう相当な女ですよね(笑)。

でも、プッチーニは明らかにミミを無垢な女の子として描いているのにわざわざこう演出する意味は?と言えば、やがて死ぬ(自分では気づいていなかったとしても)ミミが、人生を賭けてロドルフォを愛したのだ、という物語が浮き彫りになることでしょうか。

ミミを演じる者にとっては、やってて恥ずかしいくらいの純粋無垢なミミより「本気で計算するミミ」の方が難しくもあります。でも私も女ですから、一度こちらの設定でやってみたいとも思っていました。

結果、やはり難しかったし辻褄が合っているか?不安を抱えつつの稽古でしたが、演じ切ってみると、1幕や2幕のまだ元気で快活なミミと、3幕の病んだミミ、4幕の天使のようなミミ、という変化は分かりやすく表現できるように思いました。

多くのお客様にも「新鮮だった」とか「納得した」、「川越さんにはこちらの演出の方が合ってる(どういうことじゃ!)」とか言っていただきました。私の計算は成功したということかしら。ウッシッシ。

聖子ちゃんのディナーショーか!という値段にも関わらず帝国ホテルにオペラを見にいらしてくださったお客様、本当にありがとうございました。ホテルの宴会場でここまでのことができるのか!というのはさすが、帝国ホテルでした。

次にミミを演じる時は、どっちのタイプのミミかなぁ…。