ふくよかな不協和音

「天守物語」は今日が初日です。私の本番は明日なので、今日は昼間ゲネプロ(何から何まで本番通りやる、最後の予行演習のようなもの)をしてきました。

オペラの本番では、オーケストラがピットに入って一緒に演奏します。が、費用やスペースや諸々の問題で、我々がオーケストラと合流するのは本番の直前、一緒に稽古できるのは多くても一週間ほどです。

それまでの長い音楽稽古や立ち稽古は、すべてピアノの伴奏でおこないます。まぁ、バレエでもミュージカルでもみんなそうですよね。当然と言えば当然です。

よく知っている作品、何度も出演したことがあるとか、劇場や映像やCDで何度も聞いているとか、そういうものであれば、稽古場でピアノが鳴っていても容易にオーケストラの音色をイメージすることができます。

が、「天守物語」は、4年前に一度富姫を演じたとは言え、音楽自体が複雑なこともあり、稽古中はオーケストラの音色を忘れかけていました。

「天守物語」の音楽には不協和音が満ち満ちています(笑)。いや、音楽が全部ドミソ→ドファラ→シレソ→ドミソの繰り返しだけで作られていたらつまらないわけで、この世の「素敵な音楽」には必ず不協和音がちりばめられているわけですが。

でも、稽古場でピアノというひと種類の楽器によって演奏されてきた「天守物語」のオーケストラパートは、やや平面的で終わりのない不協和音の連なりとして私の耳に聞こえていたのでした。

ところが。オーケストラと合流してみると(オーケストラにピアノも入るのですが)、この不協和音の何とふくよかで奥行きのある響き!いきなり「泉鏡花の矜恃」だの「富姫の思い」だのが理解できたような気にさえなってしまうではありませんか。

なぜこれを忘れていたのかなぁ。4年前の私はオーケストラを聞く余裕がなかったのでしょうか。水野修孝先生、ごめんなさい。いやすごいです。天才。マエストロ・山下も凄いです。

私たちの美しい妖怪っぷりにも注目してほしいですが、このドラマは是非、美しくふくよかな不協和音とともに堪能していただけたら最高です。

明日15時、新国立劇場中劇場でお待ちしています。