テノール15人!

千駄ヶ谷の津田ホールでおこなわれた、二期会ゴールデンコンサート at 津田ホール Anniversary 60「テノールの日」を聞きに行ってきました。

このコンサートは、二期会の創立60周年を記念して、ソプラノの日、メゾソプラノ・アルトの日、テノールの日、バリトン・バスの日と4回に分け、それぞれのパートの二期会を代表するスター歌手が勢ぞろいして、得意のアリアを披露するというものです。

で、昨夜はそのうちのテノールの日。テノールばかり15人も出演するコンサートなんて、いかにも面白そうですよね?…というわけで、チケットは完売。津田ホールは超満員でした。

実はソプラノ以上にプリマドンナ気質が強いとささやかれる、テノールの方々。15人もいて、歌う曲を取り合ったり歌う順番なんかでもめたりしないのかしら、と余計な心配をしたりしましたが。

トップバッターは、一番若い(多分)現在イタリア留学中という、又吉秀樹さん。素晴らしい将来性を感じさせる、さわやかに甘いアルフレードのアリアでいきなり会場をわかせ、キラ星のような先輩たちに囲まれて立派に役目を果たしていました。

そこから、声も見た目も得意分野もさまざまの個性豊かなテノールがこれでもか、これでもかと登場し、これだけ一人一人が個性的なら曲もかぶらないよなぁー、と納得したりして。

が、昨夜のコンサートの品格を上げていたのは何と言っても、大トリをつとめた田口興輔さんでした。田口さんはおそらく70歳を過ぎていらっしゃると思いますが、今現役の日本人歌手が誰も真似できないようなキャリアを、イタリアの劇場で積んでこられた方です。

今でも忘れられないのは、私が音大生だった頃、都内でおこなわれた田口さんのリサイタルを聞きに行ったら、当時「三大テノール」が盛り上がって毎年のように来日していたホセ・カレーラスが、普通のお客さんとして一人で聞きに来ていたこと。

昨夜、田口さんが歌ったのはプッチーニ「トスカ」からカヴァラドッシのアリア「星は光りぬ」。テノール15人のコンサートを締めくくるにふさわしい、王道のアリアです。

感動しました。もちろん、若かった頃にくらべれば声は思い通りに出ていないと思います。でも、田口さんが舞台に立っただけで「トスカ」の終幕の情景が目に浮かぶようでした。一言語り始めると、愛する女性をのこして死を覚悟する若き画家にしか見えませんでした。

あんな舞台は田口さんにしかできないけど、私も歌手として日々襟を正して芸術と向き合いつつ生きねばならない、と思わずにはいられませんでした。

さて、コンサートは最後にテノール15人(壮観!)が勢ぞろいしての「女心の歌」「オ・ソレ・ミオ」で大盛り上がりのうちに終わりました。またまた素晴らしいコンサートでした。やるなぁ、二期会!