「天守物語」始動

少々気が早いですが、来年2月に本番をむかえる予定の日本オペラ協会公演、水野修孝作曲「天守物語」の音楽稽古が始まりました。

今年の「高野聖」に続く泉鏡花シリーズで、「天守物語」は新作ではありませんが、1月に金沢でも公演します。今回は私は東京公演のみの参加。

「天守物語」と言えば、坂東玉三郎さんの映画や歌舞伎をご存知の方も多いかもしれません。主役の富姫は、現代では玉三郎さんにしか演じられないような、妖艶な妖怪です。

というわけで、3年前に同じく日本オペラ協会が「天守物語」を公演した時、私は妹分の亀姫役(映画版では宮沢りえさん、最近の歌舞伎では市川春猿さんや中村勘九郎さんが演じています)のオーディションを受けました。

ところが、いただいたオファーは富姫役。その時の指揮者だった敬愛する星出マエストロが「できる」とおっしゃってくださったので引き受けましたが、とんでもない苦労をすることとなりました(笑)。

演出は、日本オペラの生き字引のような超・大御所、栗山昌良先生。修羅場のような稽古場で、それはそれはしつこく(笑)怒鳴っていただきました。

3年半ぶりに血と汗と涙の詰まったスコアを開いてみたら、当時の思いがぶわっと蘇ると同時に、栗山先生から教わって書きとめておいた、たくさんの言葉も思い出しました。

私が表紙の裏に大きく書いたのは、「オペラ歌手は芸人の愛情と芸術家の誇りを持て」。我らが藤原歌劇団の創始者、藤原義江先生の言葉だそうです。

オペラは芸術性と大衆性を合わせ持たなければならない、ということですよね。世代的に私は藤原義江先生を知らないので、栗山先生を通して教えを受けることができた気がしてとても感銘を受けました。

さて、今回の公演の演出は岩田達宗さん。「天守物語」を栗山先生以外の人が演出するのは20年ぶりのことなので、どんな舞台になるか今から楽しみです。

私も栗山仕込みの富姫をいったんリセットして、新しい富姫を演じたいです。