闘牛とマドリッドおじさん

日曜日には闘牛がある、というので、マドリッドのラス・ヴェンタス闘牛場に行ってみました。地下鉄の駅を出るといきなり闘牛場。スタジアムのような形なんだけどレンガ造りで青と白のタイルで装飾してあって、なかなか素敵な建物でした。

闘牛は日没の2時間前から始めて日没の時間に終わるものなのだそうで、夏の今は19時開演?です。

席は、大きく分けるとソル(日なた)、ソンブラ(日陰)、ソル・イ・ソンブラ(日なただったり日陰だったり)の3種類で、ソルは安くソンブラが高めです。それがまた砂かぶり?から3階席まで細かく分かれていて、一番安いソルの3階なら4.9ユーロ、ソンブラの一番前は140.70ユーロ。

昨日はあまり日差しが強くなかったので、私が選んだのはソルの1階の14列目、17.6ユーロ。ソルの中でもソル・イ・ソンブラに近く、闘牛士さんや牛が出てくる入場口の正面という席でした。

たまたまこのへんの席は、闘牛好きで毎週見ている風の地元のおじさん(たまにおばさん)の集まる場所だったらしく、みんな慣れた感じで続々と集まってきて「やぁやぁ」と挨拶を交わしています。

さて、闘牛。ポスターには「本日の主役」みたいな感じで3人の闘牛士の名前が書いてあります。ガイドブックには闘牛の手順が〜笋覇佑銛を打ち7で仕留める、と書いてあったので、私はてっきりこの3人がそれぞれ槍担当、銛担当、剣担当で、2時間かけて1頭の牛を仕留めるのかと思っていました。

牛が登場すると、まずは5人ほどの闘牛士さんが、表はピンク、裏が黄色のマントを振って、牛はそれに向かって突進を続けます。

それを5分もやると、馬に乗ったピカドール(槍担当)が登場して、長い槍で牛の首根っこをブスッと刺します。3回刺したら終わりで、今度はバンデリーリョ(銛担当)が登場して、紙飾りのついた短い銛を2本×3回、牛の背中に打ちます。一発でバシッと2本の銛が刺さって牛の背中に赤と黄色の紙飾りがぶら下がると、お客さんは「オレー!(ブラボー!みたいな感じ?)」と拍手をします。

それからおもむろにマタドール(剣担当)が登場して、まずは赤い布と剣で牛を操る演技をおこないます。これが、私たちが「闘牛」と聞いて思い浮かぶ場面。どんな感じで牛と阿吽の呼吸ができてるのかわかりませんが、牛とにらみ合い、よきところで「ハイッ」とか「エイッ」とか声をかけると、牛が赤い布に向かって突進します。ひるがえる布めがけて牛が「モォー!」とか「フヌッ!」とか言いながら土埃を巻き上げ、背中から血を流しつつ走り、まとめに暖簾をくぐるみたいな感じで牛の顔の真上を赤い布が通過すると「オレー!」の喝采となります。

この繰り返しを10分ほどやってお客さんを楽しませたところで、マタドールは剣を本物?に取り替えます。ここからは牛と正面に相対し、「今だ!」というタイミングでぐさっと、牛の肩甲骨の間5センチほどしかないという急所に剣を刺し込みます。

上手くいくと、1メートルはあろうかという長い剣が根元まで深く刺さります。牛は一瞬キョトンとします。そこですかさず助手が3人出てきてピンクのマントで牛を囲み、ぐるぐる走らせて最後の力を使い果たさせます。牛が前脚を折って座り込んだら、助手の一人が短剣で眉間?の急所を突いて、牛がこと切れて横向きにバタリと倒れたらおしまいです。

ここまで約20分。思いのほか展開が早かった。殉職?した牛を3頭の馬が引いて場外へ連れていき、軽ーくグラウンド整備が済むと、レースクイーンならぬ牛担当おじさんがプラカードを持って出てきて「次の牛はこんな感じでーす」とインフォメーションして、すぐに次の演技が始まります。

2時間の公演?の間にこれが6回繰り返されました。6頭の牛が昇天したわけです。そして「本日の主役」の3人はいずれもマタドール(剣担当)。オペラに出てくるとおり、闘牛の花形はマタドールなんだなぁ。まぁ、そりゃそうか。牛がトドメをさされて地面にバタリと倒れる瞬間は、見ているこちらも興奮します。

昨日は3人のマタドールが2回ずつ演技をしたわけですが、中でも最初の1頭目とトリを務めたのは、赤に金色の刺繍の衣装のアニバル・ルイス君32歳。人気者みたいで、カーテンコール?ではみんなが白いハンカチを振り、女子トイレには彼のブロマイド(笑)が貼ってありました。

エスカミーリョじゃないけど、この職業はいかにもモテそうですよね。とりあえず衣装がべらぼうに格好いいし、牛を操って舞い、最後は一突きで仕留める。間違いありません。

さて私のまわりの地元のおじさんたち。ものすごい匂いのする葉巻きの煙草を吸いまくり、ヒマワリの種みたいなやつをそこらじゅうにまき散らしながらポリポリ食べ、ビールを飲みながら、何かあると野次をとばしまくっていました。

「一発で刺さんかい、コラ!」「お前先週も失敗したろ、許さんぞ!」「先代の團十郎みたいにやれ!」(あくまでも私の想像です)。

闘牛そのものも興味深かったし、マドリッドおじさんたちも面白かったです。スペインにいらっしゃる機会があったら是非闘牛場に足を運んでみてください。歌舞伎やお相撲と違って牛さんの都合があるので、巡業なんかは難しそうだしね。