「ジェンダー」講義

蒸し暑い一日になりましたが、洗足学園での「オペラにおけるジェンダー」の講義、無事に終了しました。

学生は、半分くらいが管楽器の子たちで、残りの半分が弦楽器とピアノ、演奏以外のコースの子たちでした。なぜか声楽の子は一人もおらず。勉強しようぜ歌手の卵たち!と、思いましたが。

何せ歌のレッスンをするわけではなく机と椅子を並べて座った学生たちを前に講義をするわけですから、私もいささか緊張しました。

でも、三々五々教室にやってきて、やる気なーい感じで携帯電話をいじったり鏡をのぞき込んだりしている学生たちを見ていたら、自分も大学生だった頃を思い出してなんだか力が抜けました。

授業をする先生の方は緊張するのだなんて、学生だった頃は想像したこともなかったし、だいたい音大生、しかも1年生が「ジェンダー」に興味津々なわけがないものね。ちゃんと授業に出てくる分だけ、音大生は真面目というものです。

さて、ジェンダー論についての深いお話は、当然専門の先生方がたくさんなさるはずなので、私の授業は「オペラにおけるジェンダー」のテーマを逸脱しない限りで、できるだけ音大生が普段接している音楽にまつわる話をしたいと思って組み立てました

要するに、オペラの映像が満載(笑)見せる、見せる。導入は、’94年のフランス映画「カストラート」の、技巧を凝らした歌唱シーン。見終わって、「今の、男性だと思った人?」…約6割。「じゃ、女性だと思った人?」…約4割。私の期待以上の反応をしてくれる、何と感受性の豊かな学生たちではありませんか。

中には、彼らが生まれたか生まれないかの頃の映画なのに(私もDVDを持っていなかったので買おうと思ったら絶版で、アマゾンの中古品はプレミアがついて1万円もするし、仕方なくTSUTAYAで借りて持って行ったのです)見たことがある!という強者もいました。

そこでカストラートがどんな人々だったのかについての話、誕生した背景や、舞台でどんな役を演じていたかという話なんかを少しして、今度は映画の中でカストラートが歌う、ヘンデル「リナルド」の「泣かせたまえ」(現代にカストラートは存在しないので、残念ながら歌は吹替だけど)。

次に、カストラート亡き後もオペラの中に現れ続けた、女性が少年や青年の役を演じる「ズボン役」のお話。今回あらためてズボン役の出てくるオペラを列挙してみたら、数の多さに驚きました。学生たちに見てもらったのは、多分一番有名?な、モーツァルト「フィガロの結婚」のケルビーノのアリア。ポネル演出の映画版の、本当に男の子みたいで私の大好きな、マリア・ユーイングのケルビーノです。

続いて、ズボン役があるならスカート役は!?というわけで、スカート役なんて言葉はないけど、テノールが女装して演じるおばさん役が出てくる、私の知っている限りでは一つしかないオペラ、ヴォルフフェラーリ作曲の「イル・カンピエッロ」から、二人のテノールおばさん、ドナ・カーテとドナ・パスクワが登場する場面。

ここからは、少しオペラの物語にスポットを当てることにしました。まずは、なかなか衝撃的で私も初めて見た時びっくりした、ロバート・カーセン演出の「椿姫」の序曲を見てもらいました。

序曲で舞台上にヴィオレッタが登場する、というだけで斬新ですが、この演出では下着姿のチョーフィ演じるヴィオレッタがベッドの上にいて、序曲の間じゅう、次々に現れる男たちから札束を受け取り続けます。

「椿姫」を見たことがある、という子は何人もいましたが、「男の人たちからたくさんお金をもらってたけど、この人の職業は?」と聞いたら、しーん。「娼婦、って知ってる?」と聞いたら、またまた、しーん。本当!?

援助交際、とか言えば通じたのかしら。それとも「知ってます!」と言うのが恥ずかしい単語だったのかしら。ま、ともかく、19世紀の、おもにパリにおける娼婦のあり方、娼婦の種類や普通の娼婦がヴィオレッタのような高級娼婦にのぼりつめる過程なんかについての話をしました。10代の子たちに向かって娼婦とか女衒とか連呼するのは気がひけましたが。

しかし、いかに「高級」にのぼりつめても、娼婦が結局どう扱われるのか、ヴィオレッタとパパ・ジェルモンの二重唱の映像を見てもらいました。今度はルネ・フレミングとレナート・ブルゾンのバージョン。

最後は、日本に娼婦がいた時代、吉原とか花魁とかの話を少しした後、「ジェンダー」的視点で見るとヴィオレッタとよく似た存在とも言える日本女性、プッチーニ「蝶々夫人」の蝶々さん。目下私は蝶々さんを勉強中なので、これは思い切って私がアリアを歌いました。学生たちよ、練習台にしたわけじゃないよ。

授業中、寝ていると思われる子ももちろんいましたが、さすがに私が歌っている間は(うるさいから)目を覚ましてくれたようです。しめしめ(笑)。

今の音大の1年生にすごく興味があったので、私としては話をしながら学生たちを観察したりして楽しかったですが、彼らにとってもちょっと面白い息抜きのような時間になっていたら嬉しいなぁ。

授業後に話しかけてくれた数人の女の子は、話してみたら見かけよりずっと純粋、というか幼い感じでした。去勢とか娼婦とか、そんな話ばかりで大丈夫だったかしら…

 
  • コメント(全5件)
  • Kaiser 
    7/2 20:38








    然う言えば…


    二年位前、GREEで絡んだ


    洗足の女の子が居ました!


    声楽とVn.専攻でしたが、


    其時高三だったので


    もう二年に成ってるか ..


    Wienに短期home stay中で、


    ドイツ語も結構、出来


    頭の良い子でした!!
  • ぱむ♀多忙★in&コメ減m(__)m 
    7/2 21:01

    講義お疲れ様でした


    私は勿論、娘(大学三年)も受けたかった講義です
    回、受講出来た学生さんたちが羨ましい

    娘には声楽(私の希望)かピアノ(本人の希望)で音大に進学してほしかったのですが、親の夢を押し付けるのもいけないし、本人も演奏家で食べていける実力もないと考え、文系の学部で、オーストリアやドイツを中心としたヨーロッパの文化、芸術、歴史等を学んでいます。本人も合唱をやっていたので、オペラや舞台芸術はもとより、映画(特に古い物)等についての研究が中心のようです。
    ジェンダーについての講義も受けていたので、他大学にも公開されていたのでしたら、前の方の席に図々しく陣取り、目は皿、耳はダンボにして、受講したことでしょ

    私だったなら…川越さんの歌の部分に、一番うっとりしてたと思います


    長いコメントで、失礼いたしましたm(__)m
     
  • Moon rose 
    7/2 23:32

    先生って大変!でも塔子さんは余裕がありますね!さすがです!
  • ぱむ♀多忙★in&コメ減m(__)m 
    7/5 15:05

    日記にコメントありがとうございます

    o(^-^)o !(^^)!

    娘はただの舞台芸術マニアというかヲタク(そんな分野あるのかしら?)です
    してオーストリアやハプスブルグ家のヲタクで、エリザベート皇妃にいたっては、「エリザベート皇妃フェチ」だと言っていて、好きなものに関する文献を読み漁っているだけです
    f^_^;

    ちょっとは努力家な娘はともかく、何でもつまみ食い程度の私にまで、音楽を続けることの素晴らしさのメッセージを戴き、とっても嬉しい気持ちで


    ありがとうございました

     
  • Kaiser 
    7/7 06:44





    いいな


    ウチんトコにも


    お出ましに成って


    呉れ無いかな


    姫 ...
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