ディジェスティーヴォ

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私のリサイタルのタイトルになっている「アペリティーヴォ」は食前酒のこと、と前にも書きましたが、では食後酒のことは何と言うのかというと、「ディジェスティーヴォ」です。

「アペリティーヴォ」は「アプリーレ(開く)」からきた言葉と言われていて、食事を始める前に食欲を増進する役割を果たしますが、「ディジェスティーヴォ」は「ディジェスティーレ(消化する)」からきていて、文字通り消化を助けるはたらきをします。

私たち日本人は「たくさん食べちゃったから明日もたれないように最後に泡盛を飲んでおこう」とはなりませんが(笑)、イタリア人はディジェスティーヴォの作用を信じていて、「お腹がいっぱいだからデザートはいらない」と言うと「じゃあ消化のためにリモンチェッロを飲んでおきなさい」とか言われたりします。

ディジェスティーヴォの代表的なものと言えば、グラッパですね。葡萄の搾りかすからできる蒸留酒です。ブランデーの仲間ですが、樽で熟成させたりしないのでほとんどのグラッパは無色透明です。

アルコール度数は30〜60度、小さなグラスに注いでストレートでグイっと飲みます。くはーっ、となります。

グラッパより飲みやすくて日本でも人気があって、よくイタリアみやげにもなるのがリモンチェッロですよね。レモンの皮をグラッパ(や、もっと純度の高いアルコール)に漬けて、お砂糖を加えたものです。

良いレモンの穫れるカンパーニャ州(ナポリがあるところ)のものが一番有名ですが、地中海沿岸ではわりと北の方でもレモンができるので、庭でとれたレモンを使ってリモンチェッロを作っている家も多いです。

私が住んでいたリグーリアでも、レストランには大抵自家製のリモンチェッロがあって、食後には冷凍庫で冷やした瓶ごとドン、とテーブルに出してくれるので、勝手に注いで飲んだりしていました。それとなぜか、「リモンチェッロ」ではなく「リモンチーノ」と呼びます。方言?

甘くて飲みやすいけど、アルコール度数は30度以上あるので、飲み過ぎには注意が必要です(笑)。

私が一番好きなのは、「アマーロ」という薬草酒。何の薬草からできるのか知りませんが、黒い色をしていて、「アマーロ(イタリア語で『苦い』という意味)」の名前の通り、ちょっと苦くて、独特の香りがあって、そして甘い。アマーロには氷を入れて飲むこともあります。

確かに少し薬っぽい味がするので万人受けするとは言い難く(笑)、日本ではとても手に入りにくいです。イタリア料理のお店で「アマーロ、ありますか?」と聞いてみると、なかったり、あっても百万年前に開けたきり誰も飲んでいなかったような、おそろしい感じの瓶が出てきたりします。

それでも私はアマーロを探し求めて、イタリア料理屋さんに行くと「アマーロ、ありますか?」と聞くことが多いのですが、先日行ったお店で、「アマーロはないけど似た感じのフランスの薬草酒がある」とのことで、「ベネディクティン」というお酒を教えてもらいました。

これが!驚くほどおいしかったです。確かにアマーロに似ているけど、甘みも薬草の香りもまろやかで、美しい琥珀色。うっとり。何だったんだろう、あのお酒。

このお店はちょっと高級なお店(ちなみに外苑にあるリストランテ・ホンダ、ミシュランの一つ星だそうです)だったので、もしかするとあれは、私の知っているアマーロ(大抵の銘柄はイタリアのスーパーでも買える)とは次元のちがうお酒だったのかもしれません。

でも、ちょっと忘れられないくらいおいしかったので、一度、外国のお酒がたくさんありそうな酒屋さんで探してみたいです。

…長くなりました。どうやら私、アペリティーヴォと同じくらいディジェスティーヴォも大好きみたいです。写真は、件のベネディクティンと、昨夏ナポリでリモンチェッロ片手に浮かれる私です。