ハモりの恐怖

「フィガロの結婚」のおそろしかったこと、その2は「ハモり」でした。

スザンナという役は「フィガロの結婚」の中で13曲歌いますが、そのうち一人で歌うアリアは2曲。あとはすべて重唱です。このオペラの中にスザンナの登場しない重唱はないのです。

二重唱が6曲(!)。幕開きのフィガロとの「幸せ〜」の二重唱、続く「疑い」の二重唱、マルチェッリーナとの「けんか」の二重唱、ケルビーノとの「開けてよ早く」、伯爵を「誘惑」する二重唱、伯爵夫人との「手紙」の二重唱。

三重唱が2曲。伯爵とバジリオとの「絶体絶命」の三重唱、伯爵と伯爵夫人との「スキャンダル」の三重唱。

そして、六重唱が1曲。マルチェッリーナがフィガロのお母さんだと判明する場面です。あとは2幕と4幕の大きなフィナーレ。

どれも文句なく名曲で、とくに二重唱は、出ずっぱっている割にあまり大きなアリアを歌わないスザンナにとって、見せ場でもあります。

オペラの中の重唱は、登場人物どうしが会話をしていたり、あるいは別々に自分の心情を述べたりしていて、それがあるタイミングで偶然のように「重なる(ハモる)」という体裁になっています。

プッチーニぐらい新しいオペラになると、ほとんどハモらないで終わる二重唱、というのも結構あります。愛の二重唱なんかで、ハモるも何も、テノールと二人してハイCを張り上げて終わり、とか。

そうでなくても、割とソプラノ(プリマドンナ)は他の人のことを斟酌せずに主旋律を気持ち良く歌い、まわりの方が合わせてくださる、という造りに(曲がですよ)なっている場合が多いです。

だから今までは、相手とハモった瞬間の和音の美しさというよりは、どちらかというと自分中心の「横のライン」を意識しながら歌い演じてきました。

しかし、モーツァルトの重唱はそうはいかないんですよね。まず、「ハモり」の時間が長い。その分、瞬間瞬間の和音の「縦のライン」が常に美しくハモっていないと成立しないわけです。

もちろん、スザンナがいつも主旋律を担当するわけではないので、これほど「和声」を意識して歌ったオペラは初めてでした。

極端な話、「いい声はいらないから(いやもちろんそんなわけはないんだけどね)ピッチだけは正しく、ほかの人に迷惑をかけないように」というプレッシャーがかかるわけですね。

プリマドンナ役の重圧についていつも愚痴っていましたが(みんな最後は私に丸投げするんでしょ!みたいな)、プリマドンナでない役にはまた別の重圧があることを知りました。

本当に、今までごめんなさい(誰に?かわからないけど)。経験は宝ですよね。

 
  • コメント(全1件)
  • ぱむ♀多忙★in&コメ減m(__)m 
    3/8 15:07

    ハモりの多いところが、「フィガロの結婚」の大きな魅力でもありますよ
    ピタッと揃った重唱(特に六重唱など)を聴くと、「なんて美しい和音を作り上げたのだろう」と、モーツァルトと歌い手に感動しま


    季節の変わり目です。お身体をより一層大切になさって、舞台でのますます素敵なご活躍を

     
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