83歳の体内時計

マエストロ・ゼッダのご年齢を事務所の人に聞いてみたら、なんと83歳だそうです

普通、そのお歳で、飛行機に乗って遠い日本までやって来るだけでも大変なんじゃないかと想像するのですが、マエストロ・ゼッダの動きには本当に目を見張ります。

先日も書いた通り、成田空港から稽古場に直行。翌日はキャスト全員を相手にしての6時間におよぶ音楽稽古。次いで昨日は「マエストロを少し休ませて差し上げよう」という事務所の配慮で稽古を午後から組んだところ、「なぜ朝から歌手を呼ばない」と叱られたそうです。

到着された当日に、ご挨拶がてらご本人に「お疲れでしょう」と話しかけてみたところ、「うーん。疲れたねぇ、時差ぼけもあるしねぇ」とおっしゃってはいましたが、実際には時差ぼけの「時」の字も感じさせない精力的な活動ぶりです。

でも私が一番驚嘆しているのは、マエストロの作る音楽の「テンポ感」です。

マエストロ・ゼッダはテンポが速い、という噂は来日前から聞いていたのですが、ただやみくもに「速い」というのとは違って、メリハリがあり、そして柔軟です。

経験豊富な指揮者ほど、「自分のテンポ」が決まっているものだと思うのですが、マエストロ・ゼッダは私たちに歌わせて、「ここをもう少しゆっくりやろう」「ちょっと速くしてみよう」と色々なことを試しながら、今回の出演者と演出に合ったテンポを見つけようとなさっています。

今回は、通常カットされることも多い部分(マルチェッリーナやドン・バジリオのアリアなど)をノーカットで上演するので、特にドラマ全体の「テンポの良さ」が要求されます。

だから速い部分は本当に速いし(笑っちゃうほど)、レチタティーヴォでも無駄な「間」を絶対に許してくれません。

一般に、人間って歳をとると体内時計が次第にゆっくりになると思うのです。「巨匠」と呼ばれる(からにはそれなりにお歳を召している)指揮者の演奏を聞くと、大体どっしりと重厚感がただよっているものです。

が、83歳にして、マエストロ・ゼッダの棒は少年のよう(…たとえがおかしい?)。きっととんでもなく若い体内時計をお持ちなのでしょう。

若い私たちの方がついて行くのに必死ですが、でも本番に向けてどんな風に出来上がっていくか、とても楽しみです。