楽屋の作法

舞台には楽屋が付き物ですが、楽屋には楽屋の「作法」のようなものがある、気がします。特に個室ではなく何人かで一つの楽屋を使う場合には。

私がこの「楽屋の作法」をたたき込まれたのは、合唱団の一員として藤原歌劇団の舞台に出演していた時でした。

藤原歌劇団合唱部は、日本一体育会系な合唱団として知られており(うそ)、絶対の上下関係があります(笑)。

後輩は先輩より早く楽屋に入る、鏡前は先輩に譲る、かつらは後輩から先に付けて先輩から先に取る、先輩より先にメイクを落とさない、楽屋の洗面台も先輩に譲ってお手洗いで顔を洗う、楽屋で歯磨きはしない、勝手に発声練習をしない、ゴミは各自持ち帰る、などなどなど。

私は会社に勤めたりした経験がないので、例えばエレベーターの上座はどこかとか、会議室の席順とか、そういうことを全然知らないのですが、そんなわけで楽屋の上座下座にはたいへん敏感です(笑)。

それでもここ数年、生意気にも個室の楽屋を与えていただくことが増え、「楽屋の勘」が少々鈍っていたところでした。

そこへ持ってきて、先日の「朱音会」。大先輩お三方と楽屋をご一緒させていただきました。

そんな楽屋割りになっているとはつゆ知らず、普通に集合時間に行ってしまった私。先輩方はとっくに楽屋入り。お持ちになったたとう(洋室で着物を着たりする時に敷く物)が床に敷いてあります。

ここは私が先に入って自分のたとう(…持ってない)を敷くべきところですよね。やってしまいました。

小さくなって楽屋に座っていた私でしたが、やがて出番が近づいてきたので、お化粧をしてもらうため、着ていた着物を脱いで浴衣に着替えを始めました。

すると。大先輩のお一人が「手伝うわ」とおっしゃるではありませんか。ありえなーい、と思い何度も固辞したところ、「楽屋ってそういうものよ」とニッコリ。や、優しい。

結局、大先輩に脱いだ着物や帯を片っ端からたたんでいただき、私の知っていた「楽屋の作法」では決してやってはならないことを二つも三つも重ねる結果となりました。ふー。

どうやら日本舞踊とオペラでは「楽屋の作法」も違うようです。こればかりは経験を積んで覚えるしかないので、こちらの作法を覚えるにはまだまだ時間がかかりそうです。