つながった

「高野聖」で私が演じるのは、その名も「女」です。

お医者の娘で、少女の頃から不思議な力を持ち、父のもとに来る病人の背をさすって痛みを和らげたりすることができました。

ある時、足に腫れ物ができた男の子の処置を父が誤って、男の子が立てなくなってしまいます。その子は少女から離れようとしない。

そこで父はお詫びかたがた、娘に男の子を送らせます。が、娘が男の子の家にいる間に大洪水が起きて、お医者の家は流されてしまうのです。

こうして天涯孤独となってしまった少女は、洪水から13年、今は男の子を夫として、下働きの親仁とともに、山奥のひとつ家に暮らしています。

性的不能で会話もままならない夫を持ち、山奥で老い朽ちるだけの人生。女はどうしようもなく「女」としての自分を確かめずにいられず、通りすがりの旅人を誘っては、持ち前の魔力で獣に変えてしまう。

そんな暮らしの中に、修行中の若い上人が現れます。

女は上人の中に、今までの男たちとは違う清々しいものを感じ、二人は真剣に惹かれ合います。が、上人は修行僧の身で、当然女と交わることはできない。

そして初めて、女は上人を獣に変えず、もとの姿で帰してやるのです。

…この、生々しい葛藤を抱えた、文字通り生身の人間としての「女」と、魔力を身につけ、泉鏡花独特の幽玄の世界に生きる「女」。私の中でその二つがなかなか溶け合わず、演じるのにずっと苦しんできました。

今日、ようやく、私の中で分裂していた二人の「女」がひとつにつながる瞬間がおとずれたように思います。あー、よかった。

相変わらず音程やリズムがあやしいところはありますが、デビュー当時から私を見てきてくれている、照明家の奥畑康夫さんにも、「見違えるほど色っぽくなった」と言わせましたよ。ふっふっふ。

しかし、いつもながらどうしてギリギリまで追い込まれないとできないのかなぁ。

明日通し稽古をして、それから金沢に出発です!