テレサ・ベルガンサ

  • 川越塔子 公式ブログ/テレサ・ベルガンサ 画像1
昭和音楽大学が招聘しておこなわれた、テレサ・ベルガンサの公開レッスンを聞きに行ってきました。

テレサ・ベルガンサさんはスペイン人のメゾソプラノです。マリア・カラスの一回りほど年下(つまり現在75歳くらい)ですが、イタリアオペラの黄金期に活躍した代表的な歌手のひとりです。

東日本大震災以来、今でも来日を見合わせる外国人歌手が多い中、予定どおり来てくれただけでも嬉しいですが、公開レッスンとは言え1,500円でベルガンサが見られる、ということで、昭和音楽大学の本格的オペラも上演できるテアトロ・ジーリオ・ショウワが超満員。

私は例によって、ベルガンサの演奏を生で見た経験はありません。トホホ。一番印象に残っているのはスカラ座での「ラ・チェネレントラ」の映像。ロッシーニを歌えるテクニックはもちろん、本当に可憐で役柄にぴったりで、感動しました。この役と、同じくロッシーニ「セヴィリアの理髪師」のロジーナとは、ベルガンサの当たり役です。

そんなテレサ・ベルガンサさん。舞台に登場すると、やはり往年のプリマドンナらしいオーラを放っていらっしゃいました。

今日、生徒として歌ったのは、昭和音楽大学の卒業生や大学院生。ソプラノが3人と、バリトンが1人でした。どんなレッスンだったかと言うと…。

それぞれがオペラアリアを1曲歌い終えると、「素晴らしい!何も言うことはありません。これからも今まで通り勉強を続けてね。」で終わり。バリトンの男の子には少し繰り返してアドバイスをしていましたが、女の子3人は、本当に一回歌って、何のアドバイスもなく褒められて終わりでした。

私の印象を言うと、「教える気ゼロ」。もちろん優秀な学生さんが選ばれていて、全員よく勉強していましたが、まだ若いし、ベルガンサさんが聞いて具体的に直すべき点、伸ばすべき点がないわけはありません。

それを敢えて言わなかったのか、それとも日本の若い歌手なんかに興味はないのかは分かりません。でも、興味がないなら来なければいいわけだものね。

レッスン後のお話を聞いたら、細かいアドバイスをしないことは、ベルガンサさんの世界の一線で活躍した経験を踏まえての深い示唆をふくんでいるのかもしれない、とも思いました。

4人で90分用意してあったレッスン時間は、そんなこんなで大幅に余ってしまったので、ベルガンサさんご自身の経験やこれからの展望まで、たっぷりお話して下さったわけですね。

曰く、歌手は天から授かった声に感謝すべきだが、声は芸術に奉仕する道具である、そのために必要なのは一にも二にも勉強。それは一生続く。若い歌手が肝に銘じねばならないことは、成功を急がないこと、レパートリーを間違えないこと。自分で考えなければ、まわりにおだてられてレパートリーを間違えて声を駄目にしても、誰も責任を取ってくれないのだから。

私の深読みかもしれないけど、自分のことは自分で見つめて欠点を把握し克服しなければならないし、どんな仕事をするか(しないか)も自分で決めなくてはならない。歌手は孤独である。誰も助けてはくれないのよ、というメッセージだったのでは、と思います。

まぁそれにしても、マエストラ・ベルガンサの本気レッスンを見てみたかったけどなぁ。