池辺晋一郎あらわる

昨日、「高野聖」の稽古場に、作曲者である池辺晋一郎さんがいらっしゃいました。

私はお会いするのは初めてでしたが、「N響アワー」で見ていたまんまの(当たり前か)方でした。ついでにオヤジギャグもテレビと同じ勢いで連発なさっていましたよ。ぐふ。

そんな愉快な池辺先生ですが、ご自身の10作目となるオペラ「高野聖」について、私たち歌手にイメージを説明して下さいました。

今作で先生の作曲のインスピレーションの源となったのは、泉鏡花の独特に劇的な「文体」なのだそうです。

「高野聖」は小説で、オペラ化するにあたっては小田健也先生が台本を起こしています。そういう意味で、台詞には鏡花自身が書いた言葉でない部分が多くあります。

それでも、原作の小説に流れる濃厚な鏡花の世界を音楽にして、池辺先生の言葉を借りると「劇的空間を作り出すこと」に最も心を砕いたとのこと。

例に出されたのは、かの黒澤明氏。時代劇にチェックのスカーフを首に巻いたお侍さんを登場させて批判された時、「映画は時代考証の教科書ではない」とお答えになったのだそうです。

それと同じで、「オペラはアクセント辞典ではない」バーイ、池辺晋一郎。

これは暗に、「メロディーが言葉のアクセントと合ってないよね」「なんで言葉の途中のここで伸ばすんだろう」「池辺先生が来たら聞いてみようよ」とかなんとか話し合っていた私たちに先手を打って、「四の五の言わずに書いた通り歌え」ということですね。

…かしこまりました。

一つ一つの言葉のイントネーションではなく、全体のニュアンスを大切にせよ、と心得て、何とか鏡花の世界を表出させて見せたいものです。