謙虚と自信

「謙虚」を辞書で引くと、「へりくだって控えめなさま。おごりたかぶらず素直なさま」とあります。

謙虚であることは大切ですよね。歌手にとっても「ひとりよがり」は何よりもおそろしく、私も常に謙虚であれ、と教わったし、そう自分を戒めてきました。

でも時々、きまって大きな公演のための稽古をしている途中ですが、謙虚を旨とするあまり、自分が立っている地面ごとガラガラ崩れていくような恐怖を味わうことがあります。

オペラの舞台には無数の人々が関わっており、私が演じる登場人物は私だけのものではありません。

だから「私はこうしますが何か?」という姿勢ではなく、関係者がくれるアドバイス(あるいはダメ出し)を全部受け止めて飲み込んで演じたい、そういう意味で私はとことん謙虚になりたい、と思っています。

しかし。千人とか二千人とかのお客様を前にして舞台に立つためには「自信」が欠かせませんよね。

ちなみに「自信」は「自分の能力・価値や自分の言行の正しさなどをみずから信じること」。

謙虚であることはもちろん必要だけど、稽古の途中ではしばしば自分を信じることができなくなります。

十分にキャリアのある大女優さんなんかが、インタビューで「映画に出演するたびに、自分は女優に向いてない、これで最後にしようと思う」と語っていたりしますが、そういうのを聞くと、私はその気持ちの一端が理解できると同時に暗澹たる気持ちになります。

大女優でもそこまで苦しむのなら、私がこの地獄から逃れられるわけがないもの。

いやまぁ、頼まれもしないのに進んで人前に出る仕事を選んだわけだしね。何だかんだ言って最後はやるんでしょう、と、私も他人事ならそう思います。

でも自分のこととなると、毎回、本気で「私は歌手に向いてない、これで最後にしよう」と思うんですよね。

なんだか暗い文面になりましたね。今回のオペラでも、いよいよ地獄の淵を覗く時期がきたということでしょう(笑)。這い出せる見込みは今のところないけど、なんとか本番までには舞台に立てる自信を獲得してみせようではありませんか(カラ元気)

 
  • コメント(全1件)
  • Kaiser 
    10/29 22:15





    物を表現すると言う事は基本的に露骨な行為だと私は思いますね!



    ですから、芸術家と言う物は皆、表面上、如何で有れ、自信過剰!



    だって、謙虚と自信か釣合って、差引ゼロでは、表出する物は無い



    過剰分の評価は世間がす可き事!



    何かを表現したいから、表現す可き物を探して来るのでは無くて、



    常に、外に向って吐き出さねば、爆発して了い然うな程、表現したい物で溢れ返ってるのが芸術家!



    唯、芸術家と言っても、演奏家は作曲家と聴衆の仲立をする仲介者ですから、特に存命中の作曲家の作品の場合は気を使うでしょう!!
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