出会い

オペラの仕事は、出演する演目ごとに、共演者、指揮者、演出家、舞台監督、スタッフ、すべてが入れ替わります。

一度一緒に仕事をした歌手やスタッフと別のプロダクションで再会する機会はありますが、そっくり同じメンバーでもう一度仕事をすることはありません。

もちろん、このようにして数限りない出会い(と別れ)を繰り返していくことが、この仕事(ほかの音楽家とか役者さんなんかも同じかもしれませんが)の醍醐味でもあります。

が、いつも同じ職場に通って同じ上司や同僚と仕事をするような職業を、心底うらやましく思ったりすることもあります。

「演出家が神様」みたいなオペラの稽古場で、特に初めて出会う演出家に、自分の実力を正しく伝えて信頼を勝ちとっていく、というのは、なかなかしんどい作業だからです。

私は、前にこのブログにも書きましたが、演技に関しては頭で納得しないとテコでも動けないし、頭で理解してから体が自由になるまでにとても時間のかかるタイプです

というわけで、稽古の過程で「でくのぼう」みたいになる期間があるので(笑)、初めての演出家と仕事をすると、たいてい「こ、こんなやつが主役で大丈夫なのか!」と思わせてしまい、稽古場を凍りつかせる瞬間を作り出します。

そんな時、デビュー間もない頃は「大丈夫なのか、ワタシ…」と、いちいち自分もパニックに陥ったりしていましたが、今は、「皆さん心配させてごめんなさいね、本番までには何とかするからもうちょっと待っててねー」と思える(言わないけどね)くらいにはなりました。

今回の「高野聖」の演出家、小田健也さんとも、仕事をするのは初めて。今はまだ立ち稽古が始まったばかりで、小田先生も「このプリマはどれだけやれるのかな」と私を値踏みなさっているところでしょう。

こちらはこちらで、作品の解釈や演出プランとは別に、どんな演出家にもある「好き嫌い」や癖のようなものを、必死に嗅ぎ取ろうとしているところです。

そろそろ私もパパッと動けて「こいつデキるな」と思わせる歌い手になりたいんですけどねー。稽古場が凍りつく、あの身のすくむ瞬間だけは何とか避けたいものです。

 
  • コメント(全1件)
  • Kaiser 
    10/10 18:29





    場数を踏んで、結果を積重ねて、名声を得るしか無いんじゃ無いですかね?然うすれば、processは其人特有のstyleとして認知される。



    ヨーロッパの劇場では、遣り方やソリが合わずにイザコザが起きて決裂なんて話は、劇場雀の恰好のネタにされる位に、日常茶飯事の事ですし



    芸術家同士、個性がぶつかり有うのは止むを得無いと思いますね!!
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