原田芳雄さんと私

今から25年前くらいですが、ぼくが下北沢に住んでいて、竹中直人さんの代々木上原のマンションによく遊びに行ってた頃、ぼくが「自転車買おうと思ってるんですよ」という話を竹中さんにすると「そうか、おれが乗ってた自転車のボロっちいのがまだあるから、やるよ」と言われたんですが「どこにあるんですか?」と聞くと「あっ。原田芳雄さんちに乗っていって、置いてきたままだった!」と言われ「じゃあ一緒に芳雄さんちに取りに行こう」と東北沢にある芳雄さんちにうかがったのだった。

暑い夏の日だった。「おお、よく来たな」と家の中でパンツ一枚でくつろいでいた芳雄さんが「よおよお」と出迎えてくれた。初対面だったけど、ぼくは竜馬の役をやった若き日の芳雄さんのイメージが強かったので、それから10年以上たち、すでにちょっとお腹の出ていたオヤジ姿には、ややガッカリでしたけども。。まあ常に大勢の役者仲間を周りに集めているというフレンドリーなお人柄にはとても感心したのです

さっそくビールでも飲もうと酒席が始まり、もうそのままトーク番組になりそうなくらい貴重なお話をたくさん聞いたのだった。ま、よく憶えてないけど、お若い頃の松田優作さんや桃井かおりさんや長谷川和彦監督とかの酒の上でのケンカとかそういう話だったと思います。。

当時、芳雄さんも出演されてた映画「ビリイザキッドの新しい夜明け」の話題になり、実は竹中さんとぼくは見たとき「ちょっと、、いまいちかなあ。。。」とか納得しない印象もあったんですけど、芳雄さんはすごく映画の出来を気に入っておられたようなので、うまく調子を合わせましたよ。芳雄さんはゼルダの演奏をたいへん気に入られたようでした。
音楽の話題にもなり「君もバンドやってんのか? うちの子もギターやってんだよ」と、まだ幼かった息子さんも紹介されたな。今は立派なギタリストになられましたね。。

そいで「あの〜自転車を」と言うと「え〜、あれはもうおれが買い物に使ってるからダメだよ。あげないよ」とワガママを言って返してくれない素振りをするのですが「ま、いいや、持ってけよ」と、まるで自分の物をプレゼントするかのような口調で渡してくれたのです。ぼくも「ありがとうございます」とお礼を言いましたよ。ほんとは竹中さんのだったんですが。。。

残念ながら、あれ以来、お話する機会はなかったんですけど。。芳雄さんのご冥福をお祈りします。。