犬を取るか?金庫を選ぶか?

こんにちは、門田由貴子です。

東北応援ツアー報告の第4回です。

私たち一行は、宮城県石巻市の牡鹿半島の東南端にある孤島、「金華山」を目指すことになりました。

震災当時、宮城県の女川周辺は「津波で壊滅的」と報道された場所です。
金華山は、突き出した半島の、さらに最も海に突き出した部分の島ですから、受けた被害はどれほどかと心配していました。

鮎川港から島へは、海上タクシーで渡ります。

その海上タクシーは、ご夫婦で運行されていました。
ご主人が船の操縦、奥様が、私たち乗客のお世話係。

その奥様が話してくださった震災当日の話は、今まで報道で見たり聞いたりしたどの話よりも、迫力満点のドキュメンタリー。

以下は、その奥様のお話です。

立っていられない大地震に続いて津波警報が発令され、とにかく一目散に家に向かいました。とはいえ、何度も繰り返し大きな地震が起こり、進んでいる道自体が「ウェーブ」のように波打ち、なかなか前に進めません。

自宅に帰ってみれば、小学生のお子さんがいくら探しても見当たらない!
とはいえ、悠長に近所を捜し歩いている時間はありません。
津波は、自宅のすぐ目の前に迫ってきているのです。
いますぐに山の上を目指して避難しなければ、自宅も本人も、津波に呑み込まれてしまいます。

「きっと遊びに行った先から避難しているに違いない」
一瞬を争う緊急事態では、そう信じるしかありません。

では、家から何を持ち出すか?
家の奥には、金庫があり、長年の事業で蓄えた財産が入っています。
そして、家の中と外には1匹ずつ、愛犬が…。
金庫を取るか? 犬を選ぶか?
とてもとても、両方を選ぶ時間はありません。
逃げおおせるまでの時間は、わずか一瞬。

とっさに「犬は家族だ」と考え、金庫をあきらめ、犬2匹を車に載せて、山の上を目指します。

その背後には、ものすごい勢いで津波が迫り、「あっ」という間もなく、自宅が黒い煙とともに呑み込まれていきます。

車で移動できるのは、途中まで。
避難所に、ペットは連れて入れません。
仕方なく、駐車場に車を置き、犬2匹もその中に置いたまま、避難所に向けて走っていくと…。

津波の勢いは止まらず、駐車場にいま置いたばかりの車まで、流されていきます。その中には愛犬2匹が…。

3月11日その日は、津波から逃げるのだけで精一杯。

その間、ご主人と従業員は、船を沖に逃がすために、津波に向かって出航中。
津波は、何度も何度もくりかえし襲い掛かってきます。

お子さんは? ご主人と従業員は? 命の次に大事な船は? 車に乗ったまま流されていく家族同然の愛犬2匹は……。

<続く>