安倍内閣不信任決議案への賛成討論(2016年5月31日)

安倍内閣不信任決議案 賛成討論

二〇一六年五月三十一日

民進党の江田憲司です。私は、民進党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました安倍内閣不信任決議案に賛成の立場で討論いたします。

1.アベノミクスの失敗と増税先送りの責任回避

安倍内閣を不信任すべき第一の理由は、アベノミクスの破たんと、その必然の帰結たる10%消費増税の先送りです。そして、その先送りの理由を、自らの経済失政ではなく、世界経済のせいにして責任を回避しようとする、その安倍総理の政治姿勢そのものです。

安倍総理、総理は2014年11月、10%への消費増税の延期を表明された際、「再び延期することはない。はっきりとそう断言する」「景気判断条項を付すことなく確実に実施する」「3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出す」とおっしゃった。そう、景気情勢如何にかかわらず、財政健全化のため、国民に消費税を10%にするという約束をしたのです。そして、その是非を問う解散総選挙まで断行した。

ところが今、そのあなたが、再び、その消費増税を再延期しようとしているのです。「信なくば立たず」、総理、総選挙での公約を一体なんと心得ているのでしょうか。一国の総理の言葉はそんなにも軽いものなのでしょうか?身内の麻生財務大臣や稲田政調会長からさえも、増税先送りなら「衆院を解散して信を問うべきだ」「そうじゃないと筋が通らない」との声があったと聞いています。 
アベノミクスが本当に効を奏しているのなら、再延期の必要などありません。そうです、再延期なら、アベノミクスが失敗したことを総理自らが認めたということにほかなりません。この重大な公約違反、国民に嘘をついたことになるというだけで、十分すぎるほどの不信任の理由ではありませんか。

政権発足以来、あなたは「アベノミクス」「アベノミクス」と呪文のように唱え続けてきました。しかし、ほとんどの国民が景気回復を実感せず、生活は一向に良くならないばかりか、格差や貧困が拡がっている。たしかに「金融緩和」=第一の矢は飛びました。しかし、これはあくまで「カンフル剤」です。

たしかに一本打てば一時的に体はシャキッとする。円も安くなり株も上がった。ただ、当初から、私も警鐘を鳴らし続けてきましたが、カンフル剤は二本も三本も打つものじゃないのです。打ってもその効果はどんどん減殺されていくのです。総理、今、その通りのことが起こっているんじゃありませんか。

そして「財政出動」=第二の矢は「とんでもない方向」に飛んでいる。国民の貴重な税金を、「国の新陳代謝(技術革新)」や「国民の生活」に充てていけば良いものを、安倍政権は相変わらず「公共事業のばら撒き」や「使い途のない基金へのブタ積み」に充てている。

例えば、公共事業は安倍政権になって、補正予算を含む決算ベースで年間10兆円にまで膨れ上がりました。それまでの5兆円の倍もの額です。震災対応等である程度増額するのはやむをえないとしても、あまりにもばら撒いたため「消化不良」を起こし、財務省によると、なんと毎年2〜3兆円も使い残している。こんなお金があったら、一体、いくつの老人ホームや保育園が建てられるというのでしょうか。

また、度重なる景気対策、補正予算編成等で安倍総理からの指示を受けた霞が関官僚は、もう知恵がないものだから、とりあえず、税金を積んどく「基金」を三百以上も作った。補正予算の規模、見映えのための苦肉の策です。その結果、支出されないで残ったお金が毎年数千億円オーダーで国庫に返納されている。

こんな税金の無駄遣いをしていて、総理、一体、あの8%への消費増税は何のためだったのでしょうか! 「消費税収は医療・年金・子育て等の社会保障に充てる」と言っていたじゃありませんか。
こうした国民を欺く予算編成、税金の無駄遣いをしていることも大きな不信任の理由です。

そして、致命的なのは、肝心要の第三の矢が飛んでいないことです。規制改革をはじめとした成長戦略、今回のサミットでも指摘された「構造改革(政策)」がまったく進んでいない。これではアベノミクスが行き詰まるのは自明のことでしょう。

何のことはない、「アベノミクス」「3本の矢」という巧みな言葉で一括りにしたネーミングに、多くの国民も含め、これまで散々惑わされてきましたが、その中身は、「金融」「財政」「構造改革」という、いわば、これまで歴代政権も採ってきた当たり前の政策手法ばかり。それが、いつものことですが、自民党の支持基盤や利権におもねり、既得権益の壁が打ち破れなかった結果、安倍政権でも、その限界を露呈してしまったということじゃないですか!

思い起こせば、2012年11月の党首討論でも、安倍総理は「来年の通常国会において定数の削減と選挙制度の改正を行っていく」と約束しました。それが、今国会の公職選挙法の改正まで引き延ばされ、おまけに、「アダムズ方式」の採用による抜本改革は2022年、10年先に先送りですか? 一体、そんな時まで安倍政権は続いているんですか。消費増税の再延期も2019年10月では、あなたはとうに総理総裁の任期を終えているんじゃありませんか!無責任極まりない!

公約違反の、消費増税や選挙制度改革の先送り。総理、「綸言汗の如し」という言葉をご存知ですか? 一国のトップが一度口にした言葉は訂正したり取り消すことができないということ。私も自民党の総理にお仕えしたことがありますが、当時の自民党宰相には最低限、国のトップとしての矜持がありました。
そして、今回は、やってはならない伊勢志摩サミットの政治利用です。アベノミクスの失敗を認めたくない安倍総理は、こともあろうに先週のサミットで、今日の世界経済はリーマン・ショック並みの危機に陥るリスクがあると主張し、それを消費増税再延期の理由にした。

この総理の認識に対しては、即座にイギリスのキャメロン首相やドイツのメルケル首相から異論が出たと海外メディアが報じています。政府部内からも、サミット直前に発表された月例経済報告の認識と違う、安倍総理が国内政局のために意図的に都合の良いデータだけを「つまみ食い」したとの批判が出ている始末です。サミットという首脳会議の場で、しかも議長として、日本国の品格を貶めた安倍総理に、「恥ずかしい!」という思いを抱くのは私一人だけでしょうか。

民進党は、現下の日本経済の現状を直視し、「強い者をさらに強くすれば、弱い者にもそのおこぼれがいくだろう」という「トリクルダウン」のアベノミクスに対し、財政では、介護や子育て、教育支援等をはじめ、「人への投資」を通じた「公正な分配」の実現により、普通の人から豊かになれる、幸せになれる、ボトムアップ型の経済政策に転換すべきだと考えています。もちろん、構造政策、成長戦略では、規制改革による新規参入・起業促進、イノベーション等による生産性の向上等を図っていかなければなりません。

そして、増税に耐えうる経済体力をつけたうえで、2019年4月には消費税を10%にする法案を今国会に提出しました。その間、徹底した「行財政改革」「身を切る改革」を行い、必要な財源を生み出しながら、子育て支援や定年金者対策をはじめとした「社会保障の充実」は予定通り実施し、軽減税率に代えて「給付付き税額控除」「総合合算制度」を実現する。安倍総理の言う2年半の増税延期なら2020年度の基礎的財政収支の黒字化目標の達成は困難でしょう。にもかかわらず、我々より半年あえて増税を遅らせるのは「国益よりも選挙」、その年の夏にある参院選前には増税したくないという党利党略だと断じざるを得ません。

2.違憲の安保法制の強行・・・平和主義、立憲主義の危機

安倍内閣を信任すべきでない第二の理由は、この内閣が、違憲の安保法制の強行により、我が国の国是、すなわち、憲法の平和主義と立憲主義をないがしろにしようとする、言語道断の内閣だからです。しかも、これは「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍総理の確信犯的な所業なのです。

その「安倍安保法制」は、言うまでもなく欠陥、矛盾だらけ。例えば、安倍政権はあくまで「自国防衛」のための「集団的自衛権」と言い募りますが、そんな概念は国際法上ありません。「集団的自衛権」とは「他国防衛」の権利です。これが国際司法裁判所のニカラグア事件判決をはじめ国際法の常識なのです。しかし、安倍政権は、今回の「集団的自衛権」はあくまで「自国防衛」のためとし、憲法が許容する「必要最小限度」の武力行使だから合憲というトリックを使った。

しかし、本当にそうなら、日本が「存立危機事態」にあるのに、それが限定的であれ「集団的自衛権」と位置付けられるため、ニカラグア事件判決も求める「他国からの要請」がないと自衛隊が出動できなくなる。どこの国に、自国が深刻な危機に直面しているのに、「他国からの要請」がなければ何もできないなんて国があるでしょうか?この一点をとってみても、今回の法制が深刻な欠陥、矛盾を抱えていることがわかるのです。

「存立危機事態」という概念自体も「幸福追求権が根底から覆される」などという曖昧な言葉を使うから、武力攻撃以外の経済的要因、ホルムズ海峡の閉鎖というケースも入ってしまう。「後方支援」する地域もより前線に近づき、「武器弾薬」の提供や戦闘機への「空中給油」までできるようになると、あきらかに「敵」はそこを狙う。「兵站をたたけ」が戦争の常識、鉄則だからです。そうなると自衛隊も応戦せざるをえない。「重要影響事態法」で「後方支援」は地球の裏側まで可能となりますから、自衛隊が他国、例えば、米国の戦争に巻き込まれる危険性も格段に高まるのです。

こうした違憲の、国際法の常識もわきまえない、従来の政府解釈すら踏みにじる「安倍安保法制」は白紙に戻し、民進党は、あらためて、中国の海洋進出や北朝鮮の核ミサイルの脅威から国民の生命・財産、領土・領空・領海を守る対案を国会に提出しました。しかし、安倍政権、与党・自民党は、あれほど対案を出せ出せと言っていたのに、この国会で一顧だにしませんでした。今でも国民の過半数はこの安保法制に反対です。総理、国会での対案審議を通じて、国民の理解を深めようとする努力をなぜされなかったんですか?!これだけでも
内閣不信任の理由は十二分にあると私は考えます。

3.言論統制・・・民主主義の危機

そして、最後に安倍内閣による「言論統制」です。今年の春、安倍政権に批判的なニュースキャスター、コメンテーターが続々と番組を降板しました。そのすべてを安倍内閣、与党・自民党の圧力の結果だとは言いません。しかし、放送局の監督官庁である総務省のトップ、高市総務大臣が予算委員会という公の場で堂々と、政治的中立性に関連して、放送局への電波停止の可能性にまで言及した。これを放送局への圧力と言わずしてなんと言いましょうか。

こうした「言論統制」、「表現の自由」や「報道の自由」が危機にさらされている状況も、安倍内閣になってから顕著です。極めて由由しき事態だと断ぜざるをえません

そうです。これは「いつか来た道」ではないのでしょうか?戦前、言論統制、言論弾圧、大本営発表の下にひたすら戦争への道に突き進んだ、あの悪夢を二度と繰り返してはいけません。我々は、この国の将来のために、子や孫のために、二度と戦争への道を歩んではいけない!のです。

我々民進党は、こうした「安倍強権政治」に対峙し、この国の道筋に誤りなきよう、国是たる平和主義と民主主義、立憲主義を徹底的に守り、持続的な景気回復を実現し、将来の社会保障に全きを期する。そのために、来るべき参院選を全力で戦い抜くことをここにお誓い申し上げ、私の賛成討論といたします。ご清聴ありがとうございました。