ジ・コントローラーZERO 第9話『誤算』

ウサーマの国につくと、いきなり問題の交渉テーブルに案内される事になった。



祖父がそう指示したそうだ。



一息つく間もない?



いや、それまで僕が置かれていた環境を考えれば、飛行機の中で過ごした時間自体が休憩みたいなものだったから。




「一時間後には隣国の責任者がやってくる。一応おさらいの説明をしておくよ」



「はい」



会談の場として用意された国境にある安宿の一室が、初仕事の舞台だった。



「隣国は中東に多い王族が全てを支配している小さな国だ。複数の油田を持ち、それを糧に小国とは思えない財産と武器を保有している」



「なるほど、だからこそ財源をみすみす他国に渡せないんですね」



「そう。我々の国同様、近代国家として生まれ変わりたいという目標はあるようだが、現実的にはまだ隔たりがある。野蛮だし、他の産業がほぼないんだ」



産業が無い。



つまり国際社会で交換するものが石油しかない訳だ。


金はたまっていくだろうが、国民の衣食住ほとんどのアイテムを輸入に頼らなければならないなら、統治者のストレスはかなりのものだ。



交渉する案件が増える訳だからね。



「ジョー、どういう風に話すか、プランを教えてくれないか」



「僕は第三者ですから、話を聞きやすい筈です。権利を分ける事は良くある話ですし、筋道通りに話せばいいんじゃないでしょうか。ウサーマさんの国と戦争はしたくないでしょうから、そこにプレッシャーをかけて…」



「うん…まあ納得はできるが…それで大丈夫かな…」



“当たり前の話が一番強い”


シンプルな筋論は社会論とイコールで、常識的と言える。



まともな事を言えば、初めて会った人のほとんどが賛同してくれるだろう?



社会常識の元に皆生きているのだから、当然の筈だった。





「来たぞ」



シミュレーションを繰り返していると、ドアから数人の付き人を連れ入ってきたのは、ダーバンを巻いた顔中がヒゲに覆われた男だった。


ウサーマは僕を一瞬見て、説明を始める。



「初めまして、匠條史郎です」



「…余はアシュラフである」



そして…。



「…という訳で常識的にも権利分配が妥当な案だと思われます」



「…権利など分配する必要は無い! 子供が何を言うか! こいつらを連行しろ!」



「えっ!」