ジ・コントローラーZERO第5話『解答』

祖父の家に住んでから、五年が過ぎた。



依然として敷地から出る事は許されなかったが、言語もあまり苦にならなくなったし、数々のスポーツを体験し、それぞれの戦略やメンタリティを学ばされた。



言語というものはコツを覚えて喋る相手がいると、どの国の言葉だろうが案外苦労しなくなるものだ。



基本の言葉がどれかを覚え文法に当てはめるだけ。



そこを抑えればある程度はいける。



たまに『日本語の日』を作ってくれたのは、今思えば祖父の優しさだったんだろう。




スポーツも、コツと戦略を覚えればさほど難しくはなかったけど、相手がモーガンだけなので自分がどれほどのレベルなのかはさっぱりわからなかったよ。




そして五年を超えると、祖父は僕に質問をするようになった。



「相手を見る時、どこを一番見たら人間性がわかるかね」



「A国とB国の戦争は何が原因だと思う?」



「パニックになっている人間をどうやって落ち着かせる?」



「人間が生きるには何が必要かね?」




といった具合に。




僕が答えると、祖父は正しい答えを教えてくれ、今度は何故かを考えさせられる。



印象に残るやりとりを紹介しよう。



「キリスト教が果たした影の役割はなんだと思う?」



「表は、残酷な現実でも宗教を信じる事で心の平穏を産む…影の役割は…?」



「躾だ」



「しつけ?」



「キリスト教はホスピタリティに溢れている。教養が無かろうとキリスト教なら知っている人間が多いだろう?」




「そうですね」



「あのホスピタリティが


“教育”



の役割を担うのだ。子供に教育すらできない家庭であっても、キリスト教に触れる事で最低限の人間性が出来上がる訳だ」




「なるほど…!」



「キリスト教に触れていない国、例えば中国等はホスピタリティが薄い。『謝った方が負け』というのは対局の考え方だからな。キリストがなんと言おうが現実に果たした役割は躾と自分の慰め、この2つだけだ」




祖父の現実的考え方は、子供の僕から見ても異常な程達観していた。


哲学に対してすらも。




「哲学といえども悩みだ。悩んだならばいついかなる時でも、どのような問題だろうと、結論を出さねばならん。残酷な答えであっても。それがコントローラーの役割だからな…」