ジ・コントローラーZERO第4話『インプット』

「まず言葉だ…月曜はインドネシア語で喋り、火曜はイタリア語。
水曜はタイ語で、木曜は広東語。
金曜はスワヒリ語、土曜はアラビア語、日曜はドイツ語で喋るように。それぞれの国の勉強は今まで通りだが…」



「?」



「月火水は二時間づつ古今東西世界各国の戦争についても学べ。残りの日は心理学と統計学だ」




当たり前のように言葉を突き刺す祖父に、ずっと渇望していた欲求が口をついた。



「あの…外…へは…?」



「おお忘れていた。毎日朝一時間、敷地の中ならば出て構わないが…庭で植物や昆虫を5つ取ってきてそれが何かを調べてノートに詳しく書きなさい」



「は…い」




僕はこの三年間、外がどんなものだったのかを忘れていた。



制約はあったけど、毎日一時間だけでも外に出られる。




たったそれだけの事が、僕には夢だったんだ。




そしてカゴの鶏が、ついに解き放たれる日がやってきた。




『ギイ…』



ドアを執事のモーガンに開けてもらうと、太陽は僕を歓迎するかのように光輝いていた。




「うわっ…眩しい!」




7月のロスの日差しは、地球では無いと思えるくらい、刺激的だった。




草の匂い、頬に当たる風の感触。




全てが新しく、不思議だった。




風はどうして起こるんだろう?




雑草は何故枯れない?




匂いとはなんだろう。





かつてなんとなく見過ごしていたものが、渇望する事により酷く新鮮なものに感じていた。




万物が構築されている仕組みに興味を持つ程に。







「よろしい」




朝食の時、祖父につたないスワヒリ語で伝えると、同じスワヒリ語でこう言われた。




そう…祖父は僕が、見過ごしている物に興味を持つように広い屋敷の中に閉じ込めたのだ。




外の世界がどんなものかを深くわからせるために。





僕は






“コントロール”





されていた。







そのまま一年が過ぎると、毎朝の外出は庭での運動の時間に変わった。





月曜はテニス、火曜はボクシング。

水曜は柔術で木曜はマラソン、金曜は総合格闘技。

土曜は中国拳法に日曜はモーガンを相手の各球技。



相変わらず料理は全部食べられなかったけど。




僕は急激に“全て”を理解していった…。