不可思議シリーズ『蜃気楼』

「真夜峰さん…珍しい名字ですね」



「…そうね。あなた…大学生?」



「なんでわかったんですか?」



「ウフフ…なんとなく」





峰不二子が現実にいたらこんな感じだろうか。



和製ミラジョヴォヴィッチともいうような彼女の外観に似合いすぎる喋り方だった。




彼女の目は怪しい光を放ち、妖絶なオーラが僕の首をしめるかのようにまとわりつく



大人の色香というのはこういう物なのだろうか。



初めての一目惚れかも?




コントローラーの匠さんと会った時とはまた違ったむせかえる程の存在感と香水の匂いに、僕は自分を保つだけで精一杯だった。







「……」




「無口なのね。末っ子か一人っ子?」



「…は…い」



「自分がしゃべってもらい事を期待してるでしょ。甘えん坊はわかりやすいわ…」



「…!」



そんな事を言われたのは初めてだ。




この人は…




「でもそういうの…嫌いじゃないわよ」




僕は精一杯の気力を振り絞って喉の奧からいつもの台詞を引きずり出してきた。



「あのっ……ヒロ君って…知ってますか…」



「………? …いいえ?」




僕の質問など関係ないように彼女は僕の頬に手を伸ばしてきた。




危険な香りが迫ってくる景色を見ても、既に僕にはその手を振りほどくエネルギーも理由も無かった。






彼女は周りから見えないように僕の口に迫り、手にしていたワインを口移しで注ぎこみ…。






…甘美でエロティックな雫が僕の体内を駆け巡る。












気がつけば、僕と彼女は六本木のホテルに居た。












彼女に弄ばれたこの夜は酷く猥雑な、だけど初めての経験に心を奪われるような夜だった。








「…まだ。まだよ…」










焦らされる度に狂いそうになる僕を彼女は楽しんで見ているようだった。













僕はいったい…どうなるんだろう。













いや…全てはどうでも良くなっていた。









僕は、彼女の虜になってしまったのだ。













この日、僕の全てが変わり。
















翌日、全てを理解した。











そう。














全てを。