不可思議シリーズ『蜃気楼』

翌日、僕は世田谷にあるフレンチの店の前に立っていた。





今は昼休みらしく入口は閉まっている…が、ドアを叩いてみようかな。



「お客様、午後の営業は6時からになりますが…」



叩くまでもなく振り返ると、お店の人…マネージャーらしき男性が立っていた。



「あ、あの、食べに来たんじゃなくて人を探していて…この写真の娘、見たことありませんか」



「…ああ、ありますよ」



「ホントですか! 一緒に来てた彼氏がどんな人か覚えてますか?」



「……? まあわかるけど…」



「ええっ! ど、ど、どんな、どんな人でしたか!」



「君」



「へっ!?」



「誕生日で来たお客様は全て覚えてるんで。君と誕生祝いに来てくれたじゃない」



「そ…そうなんですけど…他の人と…」



「彼氏と来たのは君だけだったよ」




「そ…れじゃダメなんです…」



「うーん、じゃあわからないなあ」








……………理沙…本当はヒロ君…いないんじゃ…ないのか…










僕はうなだれた。








この辺りのマンションを探して帰る事もできたが、僕の心は折れかかっていたから…






心が折れた時、どうする?




ちょっとくらいズルしたいって気持ちにならない?





僕は、なっちゃった。







どういう結果になるかわからないけど、僕の足は六本木に向かっていたんだ。







そう。










“あの人”







に話を聞いてもらうために。













「いらっしゃいませ!」




「あ…の…匠さん…いますか?」




「お知り合いですか?」




「は…い…」




「本日お休みなんです。ここだけの話ですが、うちのホストが自殺したんで、その処理で警察なんかに行ってるんですよ」




「自殺で警察に?」



「匠さんのお知り合いだからお話しますけど、魔性の女にひっかかったみたいでね。ちょっとおかしくなっちゃったんで事情説明にね」



「そうですか」



…ズルはできないもんだ。




「せっかくきたからアルカードに寄ってみよう」




「いらっしゃい」




店長の松本さんは僕を笑顔で迎えてくれた。



「今日は人気の娘を紹介するよ、真夜峰浩子ちゃん」



どこか怪しい美人が僕の目線を奪った…。