不可思議シリーズ『蜃気楼』

謎に包まれた出会いバーは、どうやら単なるキャバクラの変形版らしかった。



女の子はお客が飲み物を頼んでくれた分のバックが入って、帰りは店の送りで帰るそうだ。



この詐欺みたいな形式店は六本木に何店舗か同種の店があって、どれも微妙に違ったシステムで男から金を取っているらしい。



中途半端にお金を持ってそうな客が、やけに威張って騒いで飲んでいるところを除けば、美人ばかりで居心地は悪くなかったけど。




…こんな美人達が出会いを求めてよなよなやってくるようなうまい話があるはずないと改めて思った。



あー…世の中はシビアだな。



だけど、そうすると理沙は出会いを求めてたんじゃなくてバイトに来たって事になる



ちょっと…ホッとした。




僕と別れた後寂しくて出会いを探していたのかと思ったから。



一香ちゃんは色々とその後も質問に答えてくれた。



「ここの娘はお客と付き合ったりする事がキャバクラくらより多いの?」



「逆じゃない? 指名とかノルマは無いからさ。お客に誘われてもその場だけで相手にしない娘が多いよ。だって見てみな? 酒癖悪くて自慢ばっかりのオッサンばっかじゃん。自信があるからってこんだけ醜い自分をさらけ出してたらこっちがいいなんて思う訳ないじゃん」



…恐ろしい程的を得ているコメントに唖然としていたら彼女は抜かれていった。




その後も女の子が変わる度に質問したけど、ヒロ君を知ってる娘は居なかった…。



が、三人目の娘・知美ちゃんは意外な話を持ち出した。



「さっき匠さんと歩いてたでしょ」



「あ? 見てた?」



「彼は来ないの?」



「うん…俺を連れてきてくれただけだから…知り合いでも無いし」



「なぁんだ。近づけると思ったのに」



「…好きなの?」



「違う違う、相談があるんだよ…特別な」



「なんであの人に相談したいの?」



「だって解決できない事、無いんでしょ? アタシの妹が新しくできた自己啓発セミナーにハマっちゃって大変な事になってるんだよ」



「そ…そうなんだ。でも俺は力にはなれないよ…」




そして二時間後、店長が再びやってきた。



「ヒロってさ、下の名前?」



「ああ…名字の可能性もあるんですかね」



「それがね、ヒロがつく会員様は居なかったんだよ…名前にも名字にも」



「…え?」