不可思議シリーズ『蜃気楼』

出会いバーとは、男性からお金を取って女性を紹介するという触れ込みらしい。



入ってみると、内装は凄くお洒落なんだけど、客は泥酔していたりはしゃいでいたり、話し方だって女性に対してキャバクラと同じように接していた。




もう少し紳士的というか、お洒落な客を想像していたが、金を持っているらしいオッサンが見苦しく酔っ払っているだけだ。



「店長の松本です。匠さんの紹介だそうで」



日焼けした30代の男は丁寧にふいをついて僕の真横にしゃがんだ。



「匠さんてさっきの? あの人は何者なんですか?」



「あれ?…知り合いじゃないの?」



僕はこの、いかにも店に来る娘に手を出しそうな店長に成り行きを話してみた。



「…なるほど。じゃあ順に答えていくと…あの人は匠條史郎といって特別な人なんだ。我々六本木の住人にとっても、社会にとってもね。全てを司る…コントローラーと呼ばれている」



「そんなに凄い人だったんだ…コント…ローラー」



「一年前のIba銀行の強盗事件は知ってる?」



「はい」




「彼が解決したんだよ。でも…大きな代償を払う事になって、彼は姿を消したんだ」




「そうなんですか…」




「彼の頼みならば僕達は礼を持って接さなければならない。今日はお金もいらないから好きに飲んでいって」



「あの…」



「二つ目の答えだけど…会員を探すのにヒロだけでは多少時間がかかる。二〜三時間もらえるかな? その間によく来店する女の子を何人かつけてあげるから、自分でも聞いてみたら?」



「ありがとうございます!」



匠とかって人の効果は




“ここまでか!”




ってくらい凄かった。



できればお礼をしたいけど…





「一香さんです」



早速女性がやってきた。

確実に年上の、スリムなえらい美人だ。



「こんにちは、珍しい!」




「え? 何が?」



「だって若くない?」



「ああ…あの、人を探しにきてて」



「女の子?」



「いや、ヒロっていうお客さん。知らない?」



「あたし週に四回来てるから常連ならわかると思うんだけど…」



「そんなに? 仕事は何をしてるの?」



「ここだよ」



「え?」



「ここの女の子は出会いを求めてきてるって設定なだけでお金もらってるんだよ」



「…詐欺じゃんか」