不可思議シリーズ『蜃気楼』

自分の元彼女が自殺したらどんな気持ちになる?



僕の少ない人生経験では、身近な人間が死んだのは初めてだし…元であっても




“彼女”




が死んだのは初めてだ。



ネガティブな感情を持ったから別れた。



だけど久しぶりに会ってモヤモヤが溶けて…




楽しそうだった。




幸せそうだった。



それがいきなり…死んだ!?



彼氏にふられたから…ふられた?



「自殺…自殺って何! なんで!」



「…近所のビルから飛び降りたんだって…遺書があったんだけど…」



「なんで死んだんだ!?」




「だから遺書には彼氏にふられたからって…」




「だって…いなかったんじゃないのか!?彼氏は!?」



「怒鳴らないでよ!」



「…ごめん」



「彼氏はいなかったと思うよ。いたなんてどう考えてもありえない」



「じゃあ…架空の彼氏と恋愛して、空想の中でふられたっていうの?」



「そうとしか…考えられないよ…」



「そんなバカな事…ある?」



「答えられない。わかんない」



「理沙…」



「とにかくお通夜行ってあげて。実家でやるって。国分寺の方だから。わかる?」



「ああ知ってる。愛ちゃんは?」



「アタシは明日朝から短期留学でオーストラリアに行かなきゃいけないから…」




「そっか。わかった。気をつけて」




「コウダイ君、気を落とさないでね」




「そりゃ…無理だよ…」



電話を切るのに勢いが必要な程落ち込んでいた。



ショック過ぎる。



いない彼氏にふられたなんて。



最後に会った時、別におかしい感じはしなかった。



例えば精神的にやられてるような。



本当に幸せそうだった。



確かにあの幸せそうなテンションでいきなりふられたら死にたくなるかもしれない。



だけど恋人は空想。




空想の恋愛が勝手に進んで勝手に終わっちゃった?



「うーん…わかんね…」



チキショー…頭、よくなりたいよ…。





翌日、僕は通夜に向かった。




そこそこ大きな彼女の実家は、既に多くの人が集っていた。



「受付は…と」



ここで、名簿に名前を書こうとした瞬間衝撃が走った。





「!」





僕の名前の3つ先に







『ヒロ』







と書かれていたからだ…。