窪は切ない夢を見る13『サパーの秘めたる恐ろしさ』

と、いうわけで22時を回る頃、アタシはまたもや昨日のサパーの前に立つハメになってしまいました。



「こんばんは…お、昨日の人!」



「ああ、窪さん、宇佐美さんから聞いてますよ。自分健吾と言います。今日は色々指導しますんで」



「あの、アタシ人生初の接客業なんですが…」


「まあ1日体験ですから、ウェイター業務とかは覚えられないと思うんで、飲み要員ということで」



「飲み要員?」



「昨日の一気はお見事でしたからねぇ。心意気…でしたっけ? 一気飲みに名前がついてる人、初めて見ましたよ。とにかく一気して盛り上げてくれればいいですから」



「はあ…」


「あと、サパーはキャバクラのお客が店の女の子を連れて来る事が多いんで、王様扱いしてお客が女の子を口説きやすくしてあげてくださいね」



「ああなるほど。昨日の王様扱いはそれだったんだ」



「そうですね。ちなみに面白いエピソードとかあります? 自分のドジ話とかをストックしておくといいですよ」



「じゃあこないだゴミ箱の中で寝ちゃって起きたら警察官に派出所に連行された話とかはどうでしょう」



「それでいいっすよ。あ、いらっしゃいませ〜! じゃあ窪さん、自分がリードしますんで出撃してみますか」



「ハイ!」



緊張しますね。



「王様いらっしゃいませ!」



「おおケンゴ、元気かい」



一組目の客は…思いっきり片目が刀傷みたいなので潰れてる…恐ろしい見た目の人とキャバクラ嬢の二人組ですが…健吾君に話しかけてるのを聞くと中身はいい人っぽいみたいですね。


人は見かけによらないなあ。



「初めまして窪です。いや〜こないだゴミ箱に…」



「しっかしようやく出所できたわ。ちょっと生意気な野郎を締めたくらいで二年もブタ箱にブチ込みやがって…この年になってクサイ飯食いとうないわい」





……本物?




「ん? ブタ箱がなんだって?」


「いやあのブタ箱じゃなくゴミ箱がアタシの寝床でその…」



「いい年こいてホームレスかい。良かったらうちの組にくるかあ」



「ピヨッ?」



「とりあえずこれで旨いもんでも食いな」



一万円?



…お金もらっちゃいましたよ!



盗られた事はあってももらったのは初めてだなあ…。



「おい」



ん?



うしろ?



「様子見に来てやったぞ痛風」