窪は切ない夢を見る10『振り出しに戻る?』

『3月2日』



「……………………」



「……………」



「…」



「はっ!」



ここは…?



…暗闇の中、手を伸ばすとアタシの顔の前には壁がありました。



壁はアタシを囲んで…ってこれ、どっかで…



「……痛ッ…痛風出てる…」



まるで体育座りのように折りたたまれたアタシの身体。


ほんの少し伸ばしただけで手も足も壁にぶつかります。



つまりアタシに与えられたスペースは、直径70センチ程度みたいです。



「これは…デジャヴってやつ?」



いやいや、こないだもゴミ箱で寝ちゃったんだっけ。



またやっちゃいましたね。



「はて昨日は…」



とりあえず脱出を、と。


痛くない方の足で箱を蹴ってみる事にしました。


「せーの!」



ガンッ!



「……」



箱…ビクともしませんね。



何か足りないんでしょうか。




…よく見るとこの箱四角くて木で出来て………って事はゴミ箱じゃない?



「か、監禁…そんな…」



バタン。



おや?



足音が……これはついに監禁の主との御対面ですね…アタシの命も風前の灯火か…



メキべキッ!



箱が開けられてます!



「うわあっやられる!」



アタシも39歳にしてついに終着駅に!



せめてキリよく40歳まで生きたかった!



「あれ?」



眼鏡をかけたのび太君みたいな人がこちらを驚きまなこで見つめていました。



誘拐犯にしては弱そうで…すね。



「だ…誰?」




「…窪…ですけど…」




「窪? なんで…白菜の箱に?」



「白菜? いや人間ですけど?」



「…ちょっとでてもらえます?」



殺されるのも嫌なので、アタシは言われた通りに箱を出ました。



「あっ!」



なんと!



箱には



『白菜』



と書かれているじゃないですか!



「思い出した!」



そうそう、昨日酔っ払って歩いてたらやっちゃ場(野菜市場)の前を通りかかって、寒いからって箱に入って寝ちゃったんだ!



「それで配達されたのか…。ここどこですか?」



「千葉の市川です」



なんだ近所じゃないですか。



昨日の自分よグッドジョブ。




という訳でアタシは家に向かって歩き出しました。



「ちょっとアンタ」



「え?」