窪は切ない夢を見る02『職も無いのに職質されて』

というわけで、アタシは初老のお巡りさんに、交番まで引率されてやってきました。



「名前は?」



「窪泰明です」



「年は?」


「39歳」



「…仕事は?」



「漫画の主人公です。なったばっかりですが…」



「…どこの病院から逃げてきたの」



「いやいや、アタシは別に精神科のお世話にはなってませんから」



「酔っ払いが酔ってるって言わないでしょうが」



「なるほど…って、違います!」


「あんたね、本官も30年警官やってるけどもね…職質して『漫画の主人公』って言った人は初めてだよ。おかしくない筈ないでしょうが。それともバカにしてんのかね?



「違いますよう! アタシは人生で人にバカにされた事は沢山あっても自分がバカにする事は無い男ですから!」



「なんで威張って…じゃあ今回が初めてかね」



「そうじゃなくて! トホホ…どうすりゃわかってくれるの…そうだ、この携帯に電話してください。編集の宇佐美さんの携帯ですから」



「…いいだろう」



「ハイ?」



「あー、こちら亀有公園前派出所ですが、窪って言う人に職質したところ『漫画の主人公だ』って言うもんだからね…」



「職質? なるほど…実は…」




宇佐美さん、うまく話してる感じですね。

それにしてもここは亀有公園前派出所だったのか。


同じ漫画の主人公? として握手しときますか。



「あー、窪さん。とりあえず意味は分かったけども、あんまり怪しい行動をとんないようにね」



「お巡りさん、お互い頑張りましょう!」



「…ハ?」





と、いうわけで編集部にやってきました。



「いやあ、今日はすいません宇佐美さん。あれ、先生は?」



「今日は自分とだけです。それより、頼みますよもう。ああ言う時は『原作者です』って言ってくださいよ。主人公って…」


「すいません、浮かばなかったもんで」



「主人公の方が普通浮かばないでしょ! …まあ本題に入りますか。先生と相談したんですが…」


「やっぱり辞めるとか!?」



「そうじゃなくて、主人公は何かやってないと話を展開し辛いなあと」



「痛風とか?」



「それは仕事じゃない…」



「ああ仕事? 漫画原作者です(ニヤリ)」



「それさっき言った話でしょう! 職質じゃないんですから…漫画内での仕事ですって」