窪は切ない夢を見る01『箱の中』

『3月1日』





「………………………」




「……ん……」




「………! ここは…?」



暗闇の中、手を伸ばすとわずか10センチ先…アタシの顔の前にはプラスチックの壁がありました。


壁は円形にアタシを囲んでいます…。



「……痛ッ…」




体勢をずらし手を伸ばした途端、自分の右足の親指に激痛が走ります。



「痛風出てる…」



まるで体育座りのように折りたたまれたアタシの身体。


ほんの少し伸ばしただけで手も足も壁にぶつかります。



つまりアタシに与えられたスペースは、直径70センチ程度しかないみたいです。



「これは…」





間違い無くアタシは




“箱”





の中に居ます。




「臭ッ…なんでゲロ臭いんだろ?」



自分が一番気になる項目が一つ理解できたら、次は当然二番目に気になる項目が繰り上がると友人の匠君が言ってました。



「そういえば昨日またヨネちゃんと酒を飲んだような…」




どうやらアタシは、酒を飲んだあと、箱の中に詰め込まれたらしいです。




何故?





さて…




何故でしょう。



何かの陰謀か、身よりもないのに誘拐か…どちらにしても、脱出を試みなくてはなりません。



「おおなんか匠君みたいだ…」



とりあえず箱を痛くない方の足で蹴ってみる事にしました。




「せーの!」



ガンッ!




“バアンッ”



箱はどうやら横たわり、アタシははじき出されました。




「イテテ…ん? 明るい…」



外は昼間。



アタシが入っていた箱に目をやると…




その箱は青い蓋つきの…




「あれは…ゴミ箱? そうだ、終電なくなって寒いからってポリバケツの中で寝たんだ!」




なあんだ、謎は解けましたね。




今日は夕方から集学館で漫画の打ち合わせがあるんです。




ゴミ箱で寝ちゃったから、今からスーパー銭湯行って身支度してきます!





「ちょっとあんた、ナニしてんの?」



「え? お巡りさんに逮捕されるような事はしてないですが」



「なんでゴミ箱の中から出てきたの」



「見てたんですか、お恥ずかしい。寒かったんで…」



「…アンタ仕事は?」



「漫画の主人公です」



「はあ? ……ちょっとそこの交番まで…来てくれる?」


「ええっ」