ジ・コントローラー28『激流』

「どうやって帰るんですか?」



この川辺に追い込まれた時、僕には腹案が産まれていた。



オリジナルルートのつもりで逃げていた山中が、実は他の犠牲者達と同じ道をたどっていた事。



よく考えればこれこそが樹海からのただ一つの脱出法のヒントになるポイントだったのだ。




「そこにさ…遠金さんの上着がかかってるでしょ?」



「ああ、カイム出身の犠牲者ですね」



「その上着がここにかかっているという事は、遠金さんはここでボウガンに打たれて下の川に落ちた訳だ。その後下流で君のお父さんに発見された。つまり…」



「こ…この川に…飛び込むって…事ですか?」




「そう」




「私は泳ぎが得意なんでまだいいですけど…匠さんはそのケガじゃ無理なんじゃないですか?」



「フフ…その場合は僕は沈む。君は助かる。それだけの話」



「死…死んじゃいますよ!」



「その時はその時。君が生きて帰る事が今回の最重要目的だから」



「そんなの駄目ですよ!私助けを呼んできます!」



「…いや…その助けが来るまでには僕が出血多量で死ぬ可能性が高い。飯塚をそこの朽ち木に縛りつけて、着ているジャケットに葉っぱを詰め込んで縛り浮き袋がわりにすれば滝でも無い限り大丈夫」



「滝があったら?」



「運が悪ければ死ぬ。しかし、もともと樹海なんて迷い込んだだけでも死ぬ場所なんだ。グズグズして夜になればまた危険度が高まる。さあやろう」



「じゃあ私がやりますから休んでください」



「お願い…しようかな…本当に左腕の感覚が無くなってきたからね…」



既に僕の出血量はレッドゾーンに突入していた。



身体が冷え始めてきたのがわかる。




傷口の上を強く縛り直している間に、身投げの準備は完了したようだった。



「こんな感じでいいですかね」




「いいんじゃないかな」



「じゃあ…いきますよ!」



“ザボンッ!!”



作戦通り、飯塚を縛り付けた木は浮き、僕達は流され始めた。



身体の大きな飯塚明美を縛り付けられるだけの大きな朽ち木は、僕達が泳ぐ手助けをしてくれるには充分な浮力があった訳だ。



「流れ早いけど成功ですね、匠さん!」



「いや…そうでもない…」



「え?」



「滝の音が聞こえ…うわっ!」




…僕達は滝壺に落ち…僕の意識は暗闇に包まれた…。