ジ・コントローラー21『追跡の謎』

「美咲さん、かがみながら走って!」



続く二の矢を交わしながら僕達は怒涛のダッシュでその場を離れた。



こうしたピンチでは今まで休みたがっていた美咲さんも頑張らざるを得ない。



エネルギー源は万能薬のアドレナリンが身体を支配する



“火事場のバカ力”



というやつだ。



このアドレナリンは体内でも生成され、人間の枠を超えた業をしばしば引き出す。



映画なんかで、エピネフリン(アメリカでの呼び名)という薬名で、心臓が止まりそうな時にも投与されてるのを見たことないかい?



止まりそうな心臓も動かすくらいのパワーがある


そのおかげで美咲さんも信じられない速度で走り出してくれた。



“ズウン!”



「ギアッッ…!」



そしておそらく五十メートル程進んだところで、後方からは大きな音が聞こえてきた



「ん? 仕掛け直した罠にハマったな?」



「ハアハア…匠さん、あいつ案外間抜けですね」



「いやいや、自分が仕掛けて狩っている最中にまさか別の場所に罠があるとは誰でも思わないよ。だからこそ、それが狙いだったんだ」



「なるほどさすが…死にましたかね?」



「飯塚が1人で木の上にのせられる程度だから、それほど巨大な岩ではないはずだよ。直撃でも時間稼ぎにしかならないだろうね」



「そうですか…」



「あいつは思ったより早く追いついてきたから、とにかく足は止めない方がいい。先を急ごう」



さて、飯塚のスピードの他に、この時点で腑に落ちない事がもう一つあった。



それは



“犬の気配”



が、感じられなかった事。



犬の鼻を使わなければ、的確に僕達を追うことは不可能な筈だ。



だが、鳴き声はおろか呼吸音も聞こえなかったし、僕のシャツを追ったような時間のロスも感じられなかった。



これは一体どうした事か?



頭に疑問が渦巻く中、僕達はただひたすらに距離を稼ぐべく走った。



森をかき分け、匂いを消すために足首までの小川を渡り…




そして10分もたった頃。



「ハアハア…もう限界なんですが…」



「少し休憩しようか。座らないで木に寄りかかる感じで休むといい。頭は低めにね」



「ああっ! 匠さん!」



「どうした?」



「死体が!」



大きな木の根元にミイラ化した人間の死体が、静かに横たわっていた…。