ジ・コントローラー20『狩られる兎』

「そろそろ20分を超えたね。疲れた?」



若い娘を連れて走ったところで、どんなに頑張っても走行距離はたかがしれている。



飯塚が森の中でどんな動きをするのかまではわからないが、少なくとも過去被害者の女性達は追いつかれたから殺されたのだ。



と、いうことはどんなに走っても僕達も追いつかれる可能性は充分ある。



美咲さんも数日間食事抜きで監禁されているハンディがあるし、今森林の中を兎のように逃げてもそれだけでは勝利を引き寄せる事はできないだろう。



おまけに、飯塚を切り抜けても僕達には



“樹海を生きて抜ける”



というとてつもないハードルが待っている。



樹海を抜けるのが大変か飯塚を倒すのが大変か。




…数時間後には答えが出ているだろう。




「ん! 止まって!」



「ど…どうしたんですか?」



「罠がある…」



目の前に生える僕の目線の草を凝視すると、釣り針が見えた。



「これ…釣り針?」



「これに引っかかると…あの大きな岩がこっちに飛んでくる仕掛けだね」



遠心力を了解した古典的なモノだが、一般人が作れる代物ではない。



「よくこんなのわかりましたね」



「ほんの一瞬キラッとしたからね。でも普通はわからないだろう。みんなこれでダメージを負わされたな…」



全くの推測になるが、飯塚は週末の土曜でこうした罠を仕掛け、日曜で狩りをするというサイクルなのではないだろうか。


だからこそ日曜日まで美咲さんは生かされた訳だが。


「よし、この罠を更にいじってヤツを引っ掛けてやろう」


僕は草にかかった釣り針をそっと外し、離れた別の木の間に張った。




「だいぶ走ったし、ゆっくり行きますか?」



「いや、同じ場所に罠は2つ仕掛けない。先を急ごう」



正直、思ったより本格的な男だ。



この先も罠が待っているとすれば油断は禁物…か。



「でも、犬の鳴き声は聞こえないですよ。だからまだ追いつかれないでしょ? 匠さんのシャツを追いかけたんじゃないですか?」



「だといいけど、ここに罠があるって事はまだヤツの手の内だって事だから、もう少しだけ先を急ごう」



「…はい」



だが…次の瞬間戦慄が走った。



“ザンッ”





僕の頬わずか数ミリを、矢がすり抜け木に突き刺さったのだ。



「何!? もう来たのか!?」